官々愕々 東電と巨大銀行の大罪

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10月16日に発表された会計検査院の報告書に記載されたある事実。それを知ったら、どんな人でも、驚き、憤り、そして、悲しくなるだろう。

東電は、汚染水処理に加え、損害賠償、除染、廃炉などのために、今後、数十兆円の資金が必要になる。それを通常の事業活動で捻出することは不可能だ。普通の企業なら破綻なのだが、破綻すると東電に巨額融資をしている銀行が困る。銀行と癒着している自民党や経産省などは破綻回避のため、様々な理由を見つけては税金投入と電力料金値上げで消費者につけ回ししようと必死だ。

「政府が前面に出る」として、汚染水対策に税金投入するのもそのため。破綻処理をして銀行の債権をカットすれば数兆円の借金返済が免除される。その分、投入する税金や電力料金値上げも大幅に縮小できるのだが、安倍総理は明確に破綻処理を否定した。

その理由の一つが、被災者への賠償が行えなくなるということだ。確かに、被災者の損害賠償債権と銀行の債権は、破綻処理するとカットされる。しかし、債権カットをした上で、被災者の債権だけは国費で支払うことにすれば問題ない。もちろん税金投入が必要になる。一般の税金だけで賄うか、一部は電力料金に課税する形で電力使用者に転嫁するのかは、国会で決めればよい。重要なのは同じ国費投入でも、破綻処理により銀行の債権をカットした数兆円分は国民負担が減るということだ。

もう一つの反対理由は、被災者の債権は真っ先にカットされるのに、社債(電力債)はそれより優先されて守られるので、正義に反するという話。電気事業法37条によって、電力債は被災者や銀行などの債権に優先して弁済されることになっている。確かに理不尽な制度だが、それを問題視する銀行や経産省の言葉を真に受けてはいけない。

実は、銀行は東電・経産省と組んで、極秘裏に銀行の債権だけを少しずつ優先的に守られる電力債に置き換えている。普通の電力債は公募発行なので多くの情報が開示されるが、今回は私募債を使うことでその仕組みを隠した。この暴挙を検査院が暴いてくれたのだ。


検査院の報告書によれば、'13年3月末までに7264億円、さらに、エコノミスト誌によれば6月末までに8000億円近くがこの私募債に置き換えられている。さらに、年末にかけて行われる債権の借り換えで、'11年3月の福島の事故以前からあった民間金融機関の債権の大部分は電力債に換わって、優先的に守られることになる。

日本政策投資銀行の債権('13年3月末で約6100億円)も別の法律で社債と同様に優先される。メガバンクが'11年3月末に実施した緊急融資約2兆円の債権も今後おそらく、密かに社債に置き換わるだろう。

その結果、被災者の債権や国が立て替えた債権だけが一般債権として残る。銀行は、被災者切捨てで破綻処理に備えているのだ。

これが人間のすることだろうか。東電は自身が事実上の破綻状態にあることを認識して、銀行だけを優遇しているのだから、債権者平等の原則に違反する。こんな行為は、破綻処理の際に、債権者詐害行為として取り消すべきだ。脅しに負けてはだめだ。

そもそも、今の仕組みがおかしい。このままでは、将来の原発事故に備えて、銀行は、他の電力会社に対する融資も社債に切り替えていくだろう。それを防ぐには、法律を変えるしかない。今国会で電気事業法改正案が審議される。電力債や政投銀の債権を特別に保護する制度をなくす改正を超党派で実現すべきだ。

『週刊現代』2013年11月16日号より

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