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金子勝、古賀茂明、小熊英二ほか小泉の「原発ゼロ」提言—私はこう考える
週刊現代 プロフィール
自慢のスピーチ力は健在〔PHOTO〕gettyimages

かつては原発推進派だった小泉純一郎元首相が考えを改め、愛弟子・安倍首相に「脱原発」を決断するよう迫っている。原子力の専門家、識者、かつての仇敵が、小泉「原発ゼロ」提言の意味を語った。

言ってることは正しい

社会学者で慶應大学総合政策学部教授の小熊英二氏は、小泉純一郎元首相が「原発ゼロ」を提言していることについて、こう語る。

「この国には脱原発しかないということを、直感的に感じ取っているのではないか。ご自分の政治的利害が動機での発言とは思いません。利権があるわけでもないし、影響力を誇示したがるタイプでもない。民意が反原発に傾き、脱原発の流れが定着したと感じ、発言しているのだと思う。

小泉発言の効果として、世の中に『自分が脱原発だと言っていいんだ』と思わせたことが挙げられます。国民レベルでも、マスメディアや議員のレベルでも、『小泉さんが言うんだったら自分も意見を言っていい』、つまりまさしく『やればできる』と思わせた。これは大きな功績でしょう。

だから各自が自分で声を出すべきです。英雄待望論で『小泉さんが脱原発をやってくれる』と『お任せ』にするのは良くない」

脱原発を訴える「小泉節」が止まらない。この1ヵ月あまりの間、元首相の「反原発活動」は活発さを増すばかり。各地で行われた講演会で開陳された小泉氏の提言の内容は、以下のようなものだ。

「いまこそ、政府・自民党は『原発をゼロにする』という方針を打ち出すべきです。原子力が安くてクリーンなエネルギーだと信じる人はもういないでしょう。東日本大震災、津波、原発事故—。未曽有の危機を、チャンスに変えるべきときが来ているんです。

『やればできる』は魔法の合い言葉だというが、いままさに原発ゼロの、自然を資源とする循環型社会の実現へ政治が決断し、国民が結束すべきときです」

そして、放射性廃棄物の最終処分場があるフィンランドのオンカロを視察した経験から、その処分場を建設する目処が立たない日本で原発政策を進めることは無責任である、と主張しているのだ。

長年にわたって反原発の活動を続けてきた京都大学原子炉実験所の小出裕章助教はこう見解を述べる。

「正直に言って、私は小泉さんのことは大嫌いです。彼は、新自由主義の経済を推し進めた政治家で、弱い立場の人たちを痛めつける性格の人ですから。彼の行動についても、何の期待もしていません。

ただし、いま彼が言っていることは正しい。原子力発電は止めるべきだし、自民党が、安倍首相が止めると言えば一挙に止められる。まことにまっとうなことを言っていると思います。

私は即刻原発をゼロにしろ、と発言し続けてきました。しかし、原子力を推進する人たちからは決まって『無責任なことを言うな』と批判されてきた。小泉さんもまったく同じような発言をし、周囲から無責任だと批判された。彼は『核のゴミの始末もできないのに、原発を続けるほうが無責任だ』と切り返した。

まさにその通りでしょう。自分たちが生み出すゴミの始末もできないまま、原発行政をやってきた。それ自体が無責任の極みだったわけです。そのことを十分に反省すべきです」

元経産官僚の古賀茂明氏は「小泉氏が説く『脱原発論』には、政治的な打算はない」と分析する。古賀氏も、小泉氏の「原発ゼロ」提言を評価する一人だ。

「純粋に『原発ゼロ』という自らの信念を口にしたのではないでしょうか。昔の小泉さんには、強いリーダーとして政治的なメッセージを打ち出し、先頭に立って有無を言わさず国民を引っ張ってくれるというイメージがあった。ただ現在の小泉さんには、そのような力はないでしょう。

小泉さんは『狼煙』は上げました。しかしその方向へ進むことになるかどうかは、結局国民がどう行動するかです。狼煙が上げられた後に、小泉さんを押し上げるようなムードができるかどうか。国民が盛り上がって、原発反対デモが再び盛り上がってくるような、政権が無視できない大きなうねりが生まれれば、それに乗って、小泉さんが次の行動に移る可能性はないとはいえない」

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