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特別読み物 パナソニック異例の人事——残酷な2013秋 そして中村派が飛ばされた
津賀社長は中村相談役と大坪特別顧問を乗り越えられるか〔PHOTO〕gettyimages

組織の長が持つ最大の権限は「人事権」だ。津賀社長がついにそれを行使した。〝前任者の否定〟が狙いだという。日本最大の電機メーカーが今、生まれ変わりつつある。その過程を人事から読み解く。

ついに粛清が始まった

「10月の役員人事はパナソニックでは過去に例がありません。通常は4月か、または6月の株主総会の前ですから。これまでの歴史上はじめてのことなので、外部が想像する以上に、社内では衝撃が走った。場合によっては、懲罰人事とも受け取られかねない。それだけに、津賀(一宏)社長が自らの姿勢を内外に示したと重く受け止められています」(長くパナソニックを取材するジャーナリスト)

津賀社長が断行した新任2名を含む8名の役員人事が大きな波紋を広げている。'13年3月期決算では2期連続となる7000億円超の巨額赤字を計上。連結売上高7兆3000億円を誇る日の丸家電の雄が、その病巣を摘出するため、ついに旧体制の〝追放〟に動き出したからだ。

パナソニックがここまでの苦境に追い込まれた原因は、中村邦夫元会長(現相談役)と、その後任の大坪文雄前会長(現特別顧問)の経営方針にあるとされる。

中村元会長はリストラによってV字回復を演出し、その後、プラズマテレビへの巨額投資を実行。なまじ功績があるだけに、誰もその無謀を諌めることができなかった。薄型テレビ市場では液晶パネルが圧倒的にシェアを拡大しつつあったにもかかわらず、その後を継いだ大坪前会長は前任者の方針を転換することができずにプラズマテレビへの「一本足打法」を継続する。

その結果が2期合計1兆5000億円にも及ぶ巨額赤字だった。'12年2月、社長就任の内示を受けた津賀氏はプラズマテレビからの撤退方針を決定する。そして満を持してこの秋、これまで手をつけてこなかった大胆な役員人事を断行した。それは中村派にとって、残酷なものだった。

パナソニックのグループ会社の役員が解説する。

「中村-大坪ラインにいた遠山敬史常務取締役(企画担当)、中川能亨常務取締役(人事担当)、鍛治舍巧専務役員(宣伝担当)の担当を変えた。ここを動かさなければ、再び中村元会長の傀儡政権になると、はっきり認識した上での人事です」

なかでも鍛治舍氏に対する仕打ちは象徴的だ。

鍛治舍氏はかつての甲子園のヒーローで、早稲田大学時代には六大学野球でも活躍。当時の松下電器に入社した。社会人野球でプレーし、プロ野球のドラフト指名を蹴って、現役引退後は松下電器の野球部監督も務めた。高校野球の解説でもお馴染みだ。

本来の業務でも、労務担当部長として中村元会長のもとで1万人リストラを押し進めた、いわば中村体制の実働部隊長だった。

また広報、宣伝担当も長く務め、潤沢な宣伝費をバックにパナソニックの対外的な〝顔〟としての活動を一手に引き受けてきた。それが今回の人事で、これまでの担当をすべて取り上げられたのだ。パナソニックOBが言う。

「今回、鍛治舍氏は企業スポーツ推進担当となりましたが、これは閑職です。勤務地も本社の門真市からグラウンドや体育館がある枚方市のオフィスに移る。まだ専務役員の立場ですが、いずれは退任、お役御免となるでしょう」

社長の庇護の下でのし上がり権勢を振るったが、トップの交代で失脚—。鍛治舍氏の実権外しは中村氏への最後通牒でもある。

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