規制緩和・政策
規制強化は間違っている!タクシー減車法案と規制の経済学
[Photo] Bloomberg via Getty Images

 自民、公明、民主の3党は30日に都市部でタクシー事業者に台数減らしを事実上義務づける法案を、議員立法で衆院に提出した。
 正式には「特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法等の一部を改正する法律案」(タクシー適正化特措法改正案)である。

 今日のコラムは、この法案を教材にして、規制のもたらす弊害を経済学の観点から明らかにしたい。
 ローメーカーたる国会議員は、もっと経済学を勉強してから経済法を立法してもらいたい。

規制強化論者は小泉政権で事故が増えたと主張する

 タクシー適正化特措法は、2009年に政権交代した民主党政権下で成立した法律だ。もともとは民主党議員による議員立法で提出されたものを、一部修正した政府案がベースになっている。

 その内容は、国土交通大臣はタクシーが供給過剰の地域を特定地域として指定し、その地域公共交通としての機能を、十分に発揮できるようにすることである(法3条)。

 実際には、特定地域に指定されると、新規参入が厳しくなり、一方でタクシー減車が実施され、既得権の利益が確保されるような実にナイーブな法律である。

 小泉政権での規制緩和によって台数が増え1台あたりの売り上げが減少、つまりタクシー運転手の賃金が減少したというのが背景にあるという。その結果、規制強化論者はタクシー事故が増加したと主張する。

 この規制緩和は2002年の改正道路運送法によって行われた。
 認可制から事前届出制への変更などで参入障壁が低くなり、新規参入が進んだ。そして、タクシー乗務員の賃金が減少し始めた。

 ただし、2006年には景気回復で改正前の水準を上回るほどに盛り返し、その後2009年のリーマンショックから再び低下した。民主党政権は、規制緩和に反対だったので、規制強化に転じたのだろう。

 規制強化に転じる理由として、規制緩和後のタクシー事故の増加をあげている。
 下図は、走行距離1億キロあたり自動車の交通事故件数の推移について、全自動車とタクシーのデータである。

 これをみると、2002年の規制緩和後に上昇しているのは事実であるが、規制緩和前も2009年の規制強化後もその上昇ペースはほとんど変わらない。

 特に、全自動車との差をとってみると、規制緩和・強化にかかわらず一貫してタクシーの事故率は上昇しているのがわかる。
 タクシーの事故率の上昇は、規制緩和が原因とはいえず、他の原因を探すべきだ。

 タクシー運転手の賃金はどうだろうか。海外旅行でタクシーを利用したらわかることだが、東京のタクシーの料金の高さは世界でトップクラスだ。
 下図は、きまって支給する現金給与額の推移について、全業界とタクシーを示したものだ。
 きまって支給する現金給与額とは、あらかじめ定められている支給条件等によって一月分として支給される税込みの現金給与額。それには、基本給、職務手当、家族手当等が含まれるほか、時間外勤務、休日出勤等超過労働給与も含まれる。

 これによれば、景気とともに上下していることがわかる。
 リーマンショックで景気が落ち込んだときには、全業界と比べて大きく落ち込み、最近の回復では全業界よりも大きく回復している。2002年の規制緩和と2009年の規制強化(ともに参入規制)と関係があるようにみえない。

 実は、2002年の規制緩和といっても、参入規制だけを緩和して、価格規制は緩和されていない。
 というのは、タクシーの場合、料金認可制となっているからだ。この料金認可では一部は緩和され、ワンコインタクシーなども少し出たが、基本的には価格規制は維持されている。

 価格規制を維持した上で、参入規制だけを緩和するとどうなるのか、経済学の基本テキストにでてくる分析で示すことができる。

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