野球
二宮清純「川上哲治、四半世紀前の提言」

 巨人での現役時代は「打撃の神様」と呼ばれ、日本プロ野球で初めての2000本安打(2351安打)を記録。巨人の監督に就任してからは9連覇を含む11度の日本一を達成した川上哲治さんが10月28日、老衰のため都内の病院でお亡くなりになりました。

「巨人の監督は生え抜きにこだわるな」

 川上さんに初めてインタビューしたのは1989年の春のことですから、およそ四半世紀前です。川上さんは69歳でした。月刊誌のロングインタビューということで3時間も時間をとって頂きました。

 お会いするまで、失礼ながら川上さんには「怖い人」というイメージがありました。監督時代はチームの情報流出を避けるために「鉄のカーテン」ならぬ「哲のカーテン」と呼ばれる情報統制を敷いたこともあります。

 ところが、実際にお会いしてインタビューすると、表情は終始、穏やかでこちらが驚くような巨人や球界の改革案がポンポン飛び出してきました。そのうちの一部を紹介しましょう。

「将来の巨人? 外部からの血の導入も必要でしょう。断っておくけど、私は巨人の監督やコーチが生え抜きでなきゃいかん、なんて思っとらんからね。だって、それは当然でしょう。監督の器でさえあれば、だれがどこの監督をやったってかまわんわけだから」

 劇画「巨人の星」の時代に育った私からすれば、この発言は意外でした。驚いている私を尻目に、川上さんはこう続けました。

「外部スタッフを採用した時には、私にも相当な批判がありました。荒川博や牧野茂をコーチとして採用した時にはOBから“これだけOBの中に人間がいるのに、外から連れてくるとは何事だ!”って随分、怒られた。このへんも、もうそろそろ改善していかなくちゃいかんな」