ブラジルW杯BEST8への道12 ザックにはU―17代表を真剣に見てほしい!

文|杉山茂樹(スポーツライター)

UAE(アラブ首長国連邦)で開催中のU-17W杯に出場している日本チームは、日本サッカー史上〝最良〟と断言したくなる文句なしのサッカーを披露している。

ロシア(欧州予選1位通過)、ベネズエラ(南米2位通過)に連勝。グループリーグ最終戦(チュニジア戦)を待たずに16強入りを決めた。早くも結果を出したわけだが、〝最良〟と言いたくなる理由は、結果を上回る感激を、内容に対して抱くことができるからだ。

「良いサッカーをしても、勝たなければ何の価値もない」。こうした価値観に対して、真っ向から反論するサッカーだ。

彼らは、良いサッカーをして勝っている。勝つために良いサッカーをしている。良いサッカーと勝利を別物として捉えないサッカーをしている。

すなわち、理想を追求した末に、勝利をつかむという離れ業を演じている。

そこに価値がある。現実的な妥協案に流されやすいこの世の中において、画期的な出来事。痛快劇と言いたくなる。

吉武博文監督(53)には賞賛の拍手を送りたい。何より、世界中の指導者、監督が驚いていると思う。日本人監督として、これは初の快挙と言える。

彼のサッカーは、ひと言でいえばボール支配率に何よりこだわるもの。想起されるのはヨハン・クライフのサッカーだ。もはや伝説になりつつある'74年西ドイツW杯で見せたオランダ代表のサッカーだ。もっと言えば、アヤックスのサッカーであり、グアルディオラによって完成型に導かれたバルサのサッカーだ。

これを目指すサッカーとして掲げる人は多くいる。しかしこれは根底から、それこそ哲学的な面から理解しないと実践不可能なもの。実際、うわべだけを真似したサッカーをあちこちで見かけるが、吉武サッカーは本物だ。

ザッケローニにつける薬

支配率60%超。欧州、南米の強豪相手にこの数字は、その哲学を完璧に理解していない限り残せない。吉武サッカーには、そのための工夫が随所に施されている。ピッチを広く使うサッカーであり、ボールをいち早く奪還するサッカーだ。センターフォワードを0トップ気味に据え、フリーマンのように動かすところも、その仕掛けの一つになる。少しばかり強引に言えば、センターフォワードはメッシ、往年のクライフを連想させるのだ。

ロシア、ベネズエラは、これに完全に面食らった。試合の進め方において、吉武サッカーは彼らを圧倒した。従来の戦い方では、両強豪にやられていたと僕は思う。この勝利は、ある意味での作戦勝ちなのだ。