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みずほ銀行は見て見ぬふり オリコ内部報告書公開「ヤクザでも担保あればOK」
専用車で出社する斎藤社長は、問題の対応に追われみずほ銀行の幹部たちと同じくホテル暮らしを続ける〔PHOTO〕香川貴宏

「はっきり言ってこの報告書は不愉快ですね。書き出しからして、経産省が暴力団とのつきあいを規定していなかったから仕方ないじゃないか、という居直りですよ」(経産省キャリア)

10月1日、みずほ銀行の反社融資に関連して、監督官庁の経産省からオリエントコーポレーション(オリコ)に対する報告書提出命令が出された。命令から半月で提出された報告書には、同社の反社に対する見解の甘さが表れていた。

〈当社は、従来暴力団や犯罪者情報等を基幹システムに「要注意情報」として登録し、(略)該当する顧客の申込の与信は、「原則禁止」としておりました〉

〈平成19年6月の反社に対する政府指針の公表等を契機に、(略)平成21年10月より「要注意情報」の定義を警察庁の「組織犯罪対策要綱」に示された反社定義に沿ったものに変更するとともに、当該情報に該当した場合の与信を「全面禁止」といたしました〉(傍点編集部、以下同)

原則禁止と全面禁止は何がどう違うのか、なぜ平成19年に公表された指針を21年になって実行したのか。突っ込みどころが満載なのだ。

冒頭のキャリア官僚が続ける。

「報告書の中には、〈今回の事案においてみずほ銀行が反社と認識した契約の申込時期は、『要注意情報』の定義を変更した平成21年10月以前の契約が全体の半数以上を占めております〉とも書かれている。みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)と経営統合して与信のチェックが厳しくなる以前や、改正暴対法や暴排条例が施行される前の融資は知らないと言わんばかりですよ」

オリコは、みずほ銀行からの依頼に応じて147件分の融資を代位弁済しているが、そのうち37件は'11年3月以降に締結されたもので、融資先が反社だと判明した場合に契約解消ができる「暴力団排除条項」が付記されている。にもかかわらず、オリコもみずほ銀も契約解消に乗り出さなかった。なぜこれほど暴力団、反社に甘いのか。

オリコの関係者が同社の体質を語る。

「暴走族なんかに所属する若者にも平気で融資していた。彼らは担保となる車をバンバン改造するが、改造車は一部で需要が高く価値が跳ね上がるため、もし焦げ付いてもオークションに出して現金化すれば、融資を回収できる。経産省から反社組織に関する監督を受けたこともないし、暴力団だろうが何だろうが担保がしっかりしていれば誰にでも貸し付けていた。もし返済が滞っても、担保を差し押さえて回収すればいいという発想」

「反社排除は困難」

オリコから監督官庁である経産省に提出された報告書。文言から、反社との取引への危機感は感じられない
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担保さえあれば誰にでもカネを貸すという、オリコのこの体質は経産省が定めた反社対応のガイドラインの抜け穴をついたもので、これが当局の怒りに火をつけた。前出のキャリア官僚が言う。

「反社の定義や排除の範囲をどう設けるかが問題なんです。反社だからといって水道や電気まで止めるのか、親族はどこまで排除するのかといった議論に陥ってしまう。厳しくしすぎて消費者の利便性を損なってしまうことも避けなければならないジレンマに悩む経産省の感情を、報告書は逆なでしている」

報告書の続きを見てみよう。

〈みずほ銀行より受け入れた反社情報については、その情報を受入れる都度、当社の基幹システムに「要注意情報」として登録し、当該顧客に対して新たな契約を行わない措置を講じました。

(略)当該契約者に初期遅延が発生した場合には、より高い意識を持って電話、書面による督促交渉を中心に、状況に応じて現地訪問や車両引揚交渉等の督促交渉を行っております〉

みずほFGに参画した後の対策を記した箇所だが、この文章から「絶対に再発させない」という決意は到底感じられない。

当のオリコは、報告書についてどう考えているのか。本誌はオリコの広報・宣伝部に取材を申し込んだが、締め切りまでに回答を得ることはできなかった。

報告書には、反社の情報がコンプライアンス委員会を通じてオリコの経営陣の耳にも入っていたと記されている。

同社の社長は、第一勧業銀行からみずほ銀を経て天下った斎藤雅之氏だ。斎藤氏はみずほFGの常務執行役員も経験しており、その気になれば情報共有できたはず。つまり、グループ全体で反社融資に対し見て見ぬふりをしていたのだ。

世論の高まりを受け、暴力団排除に躍起になっている警視庁は組織犯罪対策3課を中心に80人態勢で捜査に着手している。暴力団の構成員、準構成員、名義貸しなどを徹底的に調べ、クロと確認できたものを片っ端から立件していく構えだという。

だが、当のオリコは反社排除に及び腰だ。報告書の参考資料には、「反社排除の実際」として最後にこう書かれていた。

〈顧客取引における事後的な反社排除は、暴排条項が利用できる状況で無い限り、法律的には、強制的な期限の利益の剥奪が困難であり、また実務的には従業員の安全確保を常に意識する必要性から難度は高いものと考えられます〉

モラルなき金融機関に明日はない。

「フライデー」2013年11月8日号より

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