2020年東京オリンピックのメインスタジアムとなる新国立競技場を巡る論議が活発となっている。
下村博文文部科学・五輪担当相は、10月23日、参議院の予算員会で、デザイン通りなら総工費の試算が3000億円となることを明かし、周辺施設を中心に規模を縮小することを明らかにした。
デザインは、国際コンクールでイラク出身の女性建築家、ザハ・ハディドさんの流線型で屋根にかかる2本のアーチが印象的な作品が選ばれた。
この段階で、「8万人規模、開閉式の屋根を持ち、総床面積29平方メートル、総工費1300億円」というのが条件だったが、大型化と独特なデザインがネックとなり、予算をはるかにオーバーした。
デザインそのものは生かし、周辺を縮小するということだが、ゼネコン関係者は「それではとても間に合わない」という。
「資材と人件費の高騰が著しい。役所の積算価格に合わせると赤字になるので、公共工事では応札する企業がなかったり、入札金額が高過ぎて業者が決まらない『不調』が相次いでいる。新国立競技場で、どれだけ規模を縮小しても、8万人、開閉式屋根、といった基本構造を変えない限り、予算が倍近くなるのは避けられない」
実際、人手不足が著しい。
被災地では、廃炉、除染、がれき処理といった人手がかかる仕事が山積。発注サイドの環境省も被災地の自治体も、全国に支店・協力会のネットワークを持つスーパーゼネコンに頼るしかない。
結果、工事丸投げの「官製談合」が定着した。
加えて、アベノミクスに引っかけたプロジェクトの国土強靭化によって、公共工事ラッシュが予想され、叩き合いを防ぐために談合するのではなく、受注調整のための談合が増えている。
高速道路、港湾整備といったインフラに、今後10年で200兆円を投入するというのだから、資材と人件費の高騰は避けられず、人手不足は常態化する。
それに輪をかけるのが東京オリンピックである。
メインスタジアムだけでなく、他の競技施設や選手村などで、整備費4500億円を予定しているということだが、倍以上に膨らんだ新国立競技場がいい例で、今の構想をそのまま推進すれば、予算が倍に膨れ上がっても仕方がない。