池上彰×津田大介 【第3回】SNS時代のメディアの役割と「ポリタス」が変える政治の未来
共著『メディアの仕組み』記念対談
[左]津田大介さん(ジャーナリスト、メディア・アクティビスト)、[右]池上彰さん(ジャーナリスト)
この対談は7月10日(水)に行われた『メディアの仕組み』出版記念トークイベントの内容です。

第2回】はこちらをご覧ください。

日本と海外のメディアの違いは「独自記事」

津田: ところで、池上さんは外国に取材に行かれたりすることも多いと思うんですが、たとえば日本のメディアって記者クラブの問題なんかがあって、ちょっと特徴的なところがあると言われていますよね。海外へ取材に行かれると、現地のメディアの記者たちと話をする機会がたくさんあると思うんですが、「こんなに日本のメディアは変わっているんだ」とか「海外のメディアでこんなにおもしろい取り組みがある」と感心するようなことはありますか?

池上: たとえばアメリカで言うと、日本だったらある大きなニュースがあると各社みんな一斉に追いかけるでしょう。他社が書いているのにうちの社が書いていないと大変だ、というのがあるでしょう。アメリカの場合って、よっぽど大きなことがあればみんな書きますが、そうでなければみんな独自の記事ですね。

だから、ニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストの一面はほとんど違うわけですよ。エジプト情勢はどちらも書いていますが、アメリカ国内の話だったりすると、本当にみんなバラバラですね。これはやっぱり、独自に書いていくんだな、というのは、大したものだな、と思いますね。

津田: 海外のメディアって謝るのが上手いという話がありますね。たとえば誤報を流してしまったときに、けっこうニューヨーク・タイムズなんかは「私たちはなぜこの誤報を出してしまったのか」というのをかなり検証して、要するに言い訳なんだけれども、けっこう文学的に書く、というような(笑)。

池上: それはね、本当にとんでもない誤報が起きたときにだけ、そういうことをやるんですよ。日頃からそんなことをやっていたら、向こうも誤報はたくさんありますから、そんなにやっていられないということがあります。

たとえば、Twitterの話で言うと、今回は先週までワシントンに取材に行っていたので、向こうにいる記者にいろいろ話を聞いたんです。少し前にボストンマラソンのゴール付近で爆弾テロを起きたでしょう。あれをCNNが速報するんですが、それが誤報だらけだった、と。さまざまな情報が乱れ飛んで、次々に「あいつが怪しい」とか「あいつが捕まった」というような話がどんどん出てきて、たまたまそこにいただけで犯人に仕立て上げられた人がたくさん出てきたりしました。

たとえば、深夜にCNNが速報を出すそうなんですが、ボストンの警察に全裸の男性が連行される映像が出たりして、あそこの部分だけボカしを入れているんですが、でもその人が事件とどういう関係があるのか何の説明もないんですよ。「何か関係があるんじゃないか」というだけのことで、とりあえず映像を流してしまうというような、ものすごく無責任な垂れ流しがずっとされていて、誤報だらけだった、という話が一つあります。

もう一つは、ボストンの警察が犯人を追跡しているときに、全部Twitterで速報を出したんです。犯人逮捕の一報も、実はボストン警察のTwitterだったわけですね。そうすると、そこに来ている各社の記者がひたすらTwitterを見ているんです。スマホをひたすら見ているだけで、「あっ、捕まった」とかリポートするんですけど、でも視聴者のほうだってそのTwitterを見ているわけですから、それを見ていれば報道なんか必要ないんです。だから、「記者の仕事って何だろう、と本当に深刻な反省を迫られた」と言っていましたね。だって、警察が直接Twitterで発表しちゃったんだから。