中国
広東省で新聞vs国有企業の壮絶な戦いが勃発! メディア完全掌握を狙う習近平政権に不穏な気配が・・・
記者の釈放を求める『新快報』の一面記事(10月23日朝刊)

「請放人」(釈放してください)

中国メディア史上に残る新聞vs国有企業の壮絶な戦いの火ぶたが切って落とされた。

先週のこのコラムで、習近平政権が、中国全土25万人の記者を「制圧」するため、来年年初に「記者国家試験」を実施すると発表したことを書いた。日本の特定秘密保護法案も真っ青の習近平政治である。

記者たちには、この試験に合格しないと「新聞記者証」が発行されない。発行されないと即、失業である。そしてこの試験を受けるには、マルクス主義の報道観や中国の特色ある社会主義社会での報道の仕方など、18時間以上の研修を受けねばならない。もちろん試験の内容も、この研修に沿った「真っ赤なもの」となる。

つまり、「軍とメディアは党を磨く両刃」が持論だった故・毛沢東主席を崇める習近平主席が、メディアの完全掌握を狙ったのだった。そもそも中国のメディアはすべて国有企業で、国家新聞出版広電総局という中央官庁の管轄下にあるので、お上には逆らえない。中国では、この役所からいちいち許可を得ないと、本1冊出版できないのだ。

『新快報』記者に「商業名誉毀損罪」

この習近平政権のメディアへの攻勢を追い風として、10月19日、湖南省公安局が、隣の広東省に赴き、広州の人気新聞『新快報』の陳永洲記者を逮捕した。容疑は、中華人民共和国刑法221条「商業名誉毀損罪」である。

後に湖南省公安局が国営新華社通信の取材に答えた内容によれば、陳記者は、昨年9月26日から今年8月8日にかけて、湖南省の大型国有建設会社「中聯重科」に対する捏造記事を18回も書いたという。幹部が国有企業を私物化している、5.13億元(1元≓16円)の広告費の不透明な使用、粉飾会計などなどだ。

中聯重科は、1992年に、湖南省の建設部長沙建設機械研究所が設立した国有企業である。上海と香港で上場しており、従業員は3万人強。昨年の年商は900億元、税引き後利益は120億元に上る優良企業だ。世界80ヵ国でインフラ設備などを請け負っており、昨年のフォーブス世界企業ランキングでは779位につけている。

創業時から同機械研究所の技師である詹純新(58歳)が総経理(社長)を務め、いまも董事長(会長)を務める。つまり詹純新の完全なワンマン会社なのである。詹純新は湖南省の人民法院長(省裁判所長)の息子で、岳父は元湖南省党委書記(省トップ)という典型的な「官二代」(二世議員)である。人大代表(国会議員)と共産党大会代表も、それぞれ10年にわたって務めている。

そんな「湖南省のドン」とも言うべき男に挑戦したのが、隣の広東省で一番人気を誇る『新快報』の陳永洲記者だった。この新聞は、1998年に広州の羊城晩報報業集団が創刊した中国初の全面カラー印刷の新聞で、毎日87ページも発行している。

『新快報』は今年5月27日、「中聯重科の粉飾会計をスッパ抜く」と題した痛烈な記事を掲載した。その取材にあたったのが、陳永洲記者だった。ここから「連続追及」として、一連のこの巨大国有企業の問題、特に国有企業を私物化する詹純新への批判キャンペーンを展開したのだった。

これは一般論だが、私が付き合いのある両省出身の人々を見るにつけ、中国で一番裕福な広東省に住む広東人は、隣の貧しい湖南人を、明らかに軽視している。湖南人もスノッブな広東人が嫌いである。

それぞれ広東語と湖南方言を話し、この二つの言葉は日本語と韓国語くらいの違いがある。広東人の特徴は、目端が利いてビジネスに長ける。一方、湖南人は頑固一徹で大胆不敵だ。それぞれ、広東料理と湖南料理が中国で一番と思っている。広東省は「革命の父」孫文を輩出し、湖南省は「建国の父」毛沢東を輩出したということで、それぞれ建国の功労者だという自負がある。

つまり、そもそもこの隣り合う両省はライバルであり、犬猿の仲なのである。だから『新快報』が「湖南省のドン」を叩けば、広東人の読者は拍手喝采というわけだ。

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