[プロ野球]
佐野慈紀「“巨人打線”vs.“楽天投手”」

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再び挑戦者に戻れる強み

 一方、楽天はというと、ファイナルステージでは田中将大を筆頭に、ルーキー則本昂大、美馬学と、先発陣の好投が目立ちました。この3人については、ほぼ完璧な内容だったと言えるでしょう。3人に共通しているのは、ここぞという時に、ストライクゾーンで勝負ができるということ。今季の楽天の強さの象徴でもあったと思います。

 日本シリーズでは、首脳陣はおそらく田中、則本の2人で4勝という計算のもとに、ローテーションを組んでくることでしょう。そこに、ファイナルステージでプロ初完封を成し遂げた美馬のような、ラッキーボーイ的存在が投手陣に出てくれば、日本一の座がグッと近づいてくるはずです。ファイナルステージで弱さが露呈したリリーフ陣においては、CSでは登板のなかった青山浩二が戻ってくれば、大きいですね。

 打線は、CSではアンドリュー・ジョーンズ、ケーシー・マギーの助っ人2人に頼り切ってしまった感が否めません。正直、つながりという点ではレギュラーシーズンのような勢いはあまり感じることができませんでした。しかし、日本シリーズでは勢いを取り戻してくることでしょう。というのも、CSではリーグチャンピオンとして迎える側であった楽天ですが、日本シリーズではディフェンディングチャンピオンとしてのプレッシャーがかかる巨人とは異なり、楽天は再びチャンレンジャーになることができるからです。やはり、“追いかけられる”より“追いかける”方が、精神的には楽に戦えると思います。

 とはいえ、もし“不敗神話”が続いているエース田中が負けるようなことがあれば、流れは一気に巨人に傾いていくことでしょう。では、巨人打線が田中を打ち崩すにはどうすればいいのか。田中はピンチの時にも動じない強気のピッチングが真骨頂ですが、実はどんどん攻めていくというよりは、カウントを整えて勝負することを好むピッチャーです。ですから、巨人打線はカウントが整う前、それこそ初球からしかけていけば、チャンスは出てくるはずです。しかし、フライではなく、しっかりとゴロを打つことが重要です。

 いずれにせよ、今年の日本シリーズも初戦から見どころが満載。クライマックスシリーズ以上に、ファンを緊張感と高揚感に包んでくれることでしょう。まずは初戦、絶対に見逃さないで欲しいと思います。

佐野慈紀(さの しげき)
1968年4月30日、愛媛県出身。松山商-近大呉工学部を経て90年、ドラフト3位で近鉄に入団。その後、中日-エルマイラ・パイオニアーズ(米独 立)-ロサンジェルス・ドジャース-メキシコシティ(メキシカンリーグ)-エルマイラ・パイオニアーズ-オリックス・ブルーウェーブと、現役13年間で6 球団を渡り歩いた。主にセットアッパーとして活躍、通算353試合に登板、41勝31敗21S、防御率3.80。現在は野球解説者。