読書人の雑誌『本』
『働く。なぜ?』著:中澤二朗
「仕事の窓」と見田先生

このたび講談社現代新書から『働く。なぜ?』というタイトルの著作を上梓することになりました。狙いは二つ。一つは、働くことにまつわる様々な「なぜ?」(以降、「働くなぜ」と呼ぶ)を解き明かすこと。もう一つは、仕事のなかに奥深く分け入ると、そこには驚くほどの宝物があることに気づいてもらうことです。

「働くなぜ」には、「目次」をご覧いただければ一目瞭然なのですが、こんなものが次から次に並んでいます。留学生の「働くなぜ」(日本で働くとはどういうことか)。なぜ「仕事の話」は不可解か(チンプンカンプン、フィクション、ダブル・スタンダード)。なぜ人は仕事を嫌い、仕事に希望を託すのか。「良い研修」とは、どのような研修か。なぜ石の上に三年、下積み一○年か。誰のために働くのか。なぜ「就職」ではなく「就社」か。「求める人材像」はなぜ曖昧か。やりたいことがわからない・・・・・・等。

解き明かす鍵は、では何か。考えあぐねたすえに「仕事の窓」という概念にたどりつきました。とはいえ、その中身はきわめて平易。仕事には「二つの種類」(いつもと同じ仕事&いつもと違う仕事)、及び「二つの性格」(しごと穴&しごと壁)があり、それらを掛け合わせてできる四象限(「窓」に似ている)が仕事の内奥に迫り「働くなぜ」を明らかにしてくれるからです。加えてそこに眠る宝物をも呼び覚ましてもくれるからです。

仕事は、「仕事」として大括りしたまま眺めているだけでは何にも見えません。そのむかし『ミクロの決死圏』という映画がありましたが、そのタイトルのように真正面から細部(ミクロ)に分け入らなければ、その本性はそう簡単には見えてはこないのです。

ちなみに、「二つの種類」については小池和男先生(法政大学名誉教授)の「区分」を拝借しました(表現を若干修正)。他方「二つの性格」については、私自身が前著『「働くこと」を企業と大人にたずねたい』(東洋経済新報社、二○一一年)のなかで使い始めたものです。それは、「仕事を通して」といった表現に表されているように、「穴」の機能をはたしている時の仕事は「しごと穴」。そうではなく、「仕事そのもの」を指している時は「しごと壁」と呼んだものです。

例えば人事の仕事であれば、採用・異動・評価・処遇等が人事の「仕事そのもの」。かたや、人事が「仕事を通して」と口にしたその時私たちはすでに仕事を「しごと穴」と見なしているのです(無意識であれ)。そしてその時、実は私たちは、その「仕事そのもの」を超えて向こうにいる他者に働きかけているのです。

右の図はその「仕事の窓」です。また、図中に書き入れた一語は、各象限を象徴する言葉です(〔Ⅰ象限〕社会の日常をささえる、〔Ⅱ象限〕問題と変化に対応する、〔Ⅲ象限〕仕事を通して働きかける、〔Ⅳ象限〕未来に希望をつなげる)。また、〔Ⅲ・Ⅳ象限〕は〔Ⅰ・Ⅱ象限〕の「しごと壁」意識を「しごと穴」意識に切り換えたものです。

なお、この四象限には「からくり」(比率と構造)があります。「いつもと同じ仕事」と「いつもと違う仕事」の割合はほぼ「七:三」で、これが仕事の基本であることを教えてくれます(とりわけ「いつもと同じ仕事」はきわめて重要)。他方「構造」は、基本〔Ⅰ象限〕→〔Ⅱ象限〕→〔Ⅲ象限〕→〔Ⅳ象限〕の順に積み重なり、その順序がそのまま「学びの順番」になっています(「石の上に三年」「下積み一○年」がどうして「職業人生四○年」の土台となるのか。この「からくり」がわかれば一気に氷解します)。

 
◆内容紹介
どうして仕事に前向きになれないのか? 企業が求める人材像ってなぜ抽象的なのか? グローバル人材とはどんな人か? 「やりたいことをやりなさい」と言うけれど、それが見つからない場合には?・・・。大人も若者も、私たちの周りには「働く」ということにまつわるさまざまな疑問があります。そして、そのほとんどが、簡単には答えられない、「働く仕組み」がわかっていないと答えられないものです。 本書の著者は、これまで1万人以上の採用面接を行う一方で、若者と新型うつの問題にいち早く警鐘を鳴らしてきた人事のプロです。本書はその著者が、現場で考えに考え抜いて作り上げた「仕事の窓」という概念ツールを使いながら、日本企業の働く仕組みを鮮やかに明かし、職場に渦巻く働くことにまつわる疑問を解く一冊です。