雑誌
『しまむら』店員を土下座させて逮捕 クレーマー主婦をブタ箱に入れた「強要罪」はこんなに怖い

警察が「その気」になれば

その主婦は、写真とともに、こうツイッターに書きこんだ。

〈従業員の商品管理の悪さの為に客に損害を与えたとして謝罪するしまむら苗穂店の店長代理○○(デブ)と平社員○○。土下座させるお客様凄い凄過ぎる怖い怖過ぎる〉

北海道札幌市東区。9月3日の夕方、衣料品チェーン「しまむら」苗穂店内で、子連れの主婦(43歳)が大声を出した。店で購入したタオルケットに、穴が空いていたというのだ。

「店に来るのに使った交通費を返せ!」「カネ!」

幼い娘の目の前で店員に詰め寄った主婦は、対応した店員2人に土下座させて写真を撮ったうえ、自宅まで謝罪に来るよう言った。

主婦が「土下座写真」をインターネット上で公開した直後、匿名掲示板では「店員を土下座させたクレーマーがいる」という噂が広がった。「炎上」の格好の標的となった彼女は、瞬く間に氏名や住所を暴かれ、自宅近くで娘と一緒の写真まで撮られてしまう。

と、ここまでは近年多発しているネット炎上事件とまったく同じ展開だった。

だが、事件は意外な方向へ進む。10月7日、店員からの被害届を受けて、なんとこの主婦が警察に逮捕されたのだ。

ネット上には「こんなモンスタークレーマーには同情の余地もない」「ざまあみろ」などという声が溢れた。一方で、「強要罪」という聞きなれない罪状に引っかかった人もいる。泉岳寺前法律事務所の落合洋司弁護士もそのひとりだ。

「強要罪とは、暴行や脅迫によって『義務のないことを行わせる』、または『権利の行使を妨害する』こと。よくあるのは、暴力団関係者が相手を脅してカネを巻き上げようとするケースなどです。

しかし今回のように、客が店員を土下座させ、強要罪に問われたというケースは聞いたことがありません」

容疑者と同じアパートに住む男性は、逮捕を伝えると驚きつつこう話した。

「あの人はいま夫と別居して娘と2人暮らしですが、急に怒り出して娘を泣かせたり、部屋の外に出したり激しいところはありましたよ。半年くらい前には、子どもを叱りつける声があんまり大きいから、パトカーが駆け付けたこともあった。でも、まさか逮捕されるとはね」

店員を土下座させ、さらにそれを写真に撮って不特定多数に向け公開するという行為は明らかにやりすぎだ。ただ、これが果たして逮捕までされるようなことだったのかと考えると、違和感がある。前出の落合弁護士も首を傾げる。

「普段、『苦情を言ってきた客に土下座させられた』と訴えても、警察は相手にしないでしょう。民事トラブルということになるはずです。やはり、ネットで土下座写真が公開され、話題になっているから逮捕したのではないか、と思ってしまいます」

この推測は、外れていないようだ。ある北海道警OBは、逮捕の理由を「簡単に言えば、功名心ですよ」と断言する。

「いま社会問題になっているネット炎上に、警察として何とか食い込みたい。ネットに絡む犯罪を摘発し、『道警は先進的な課題に取り組んでいる』と警察内の評価を高めたいという考えがあるのでしょう。

さらに言えば、道警は先日、ひき逃げ事件で防犯カメラに映った女性を拙速な捜査の末逮捕し、起訴できなかったという失敗をしています。その失点も意識していたはずです。

逮捕権を運用するための判断基準の他に、こんな『自己都合』で、警察は簡単に人を逮捕するんです」

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