お福 第2回 「28歳にして20億の借金を背負い、とある衝動にかられた長谷川卓史は銀座へと繰り出した」

2013年10月16日(水) 島地 勝彦

撮影:立木義浩

第1回はこちらをご覧ください。

大西 お福さんはいつごろから女形に目覚めたのですか?

お福 大西社長さま、よくぞ訊いてくださいました。わたくしは大学を卒業して家業の家具屋で働いていたのですが、ある朝目を覚ましたら、20億の借金を抱えてしまっていたのです。わたくしは連帯保証人になっていましたので、まさに奈落の底に落ちてしまったように感じたのでございます。28歳のときでございました。

そんなある日のこと、お部屋のなかにカツラと着物をみつけたのです。わたしは学生のときにお芝居をしていましたのでそれがあったのでしょう。突然、わたくしは暗い自分を変身させてみたいという衝動にかられたのでございますよ。鏡に向かい白塗りをしてこのような芸者の出で立ちに変身して、気がつきましたら、もう電車に乗っていたのです。

奇妙なことに、同じ電車に乗り合わせたお客さまを観察すると、わたくしをジッとみつめる方、パッとみて知らん顔する方、子供連れの方で子供がわたくしをジロジロとみていたら「ダメ、ダメ」といってほかの車両に移っていく方、いろいろ反応がございました。これはいつもの長谷川卓史では味わえない感覚でした。

わたくしはドアのところに立ってぼうっと眺めながら、何でこんな格好で来てしまったんだろうと少し反省しましたが、気がついたら、今度は銀座の歩行者天国のなかを歩いていたのでございます。するとひとりのきれいな若い女性に声をかけられました。「美しいですね。来週もいらっしゃいますか?」と訊かれたので、思わず「はい、参ります」と応えたのがことのはじまりでした。

大西 それでまた次の週も行かれたのですか?

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