海賊版対策で「電子出版権」創設へ
「近代化」遅れる出版業界、関係者の思惑は「呉越同舟」[電子書籍]

急速に普及する電子書籍端末=東京都内の家電量販店で3月22日

文化庁がインターネット上で急増する電子書籍の海賊版被害対策として、出版社による差し止め請求を可能とする「電子出版権」を新たに整備することを決めた。9月5日に開催された文化審議会小委員会で大筋了承された中間報告を受け、年末までにパブリックコメントを募り、来年の通常国会に著作権法改正案を提出する流れになる。だが、これで問題は全て解決するのか──。取材を進めると、国、出版業界、そして著作権者の3者の「呉越同舟」ぶりが浮き彫りになってきた。電子書籍を巡る議論はようやく緒に就いたばかりといった様相である。

「書協としては当面、小委員会の議論を最優先したい。ただ、出版界は広いため、個々で国会議員に話をすることはあり得る。それを止めることは難しい」

中間報告を取りまとめた小委員会の席上、大手など約430社で組織する「日本書籍出版協会」の代表者がこう発言し、他の出席者が顔を見合わせる一幕があった。出版業界の利益につながらないのであれば、国会議員へのロビー活動を再び続けることを暗に示唆したものだった。

この意味合いを理解するために、出版界を取り巻く状況をおさらいする必要がある。

そもそも電子書籍など年々進展するデジタル化・ネットワーク化に対し、これまで文化庁は「及び腰」だったと指摘される。霞が関では2010年から文部科学省、経済産業省、総務省の3省で「デジタルネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会」、いわゆる3省懇で、電子書籍ビジネスにおける課題や制度に関する検討や、国立国会図書館が進めるナショナル・アーカイブス(情報集積)の活用方法などの議論を続けたが、具体的成果に乏しかった。