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国民的大論争 津波で失われた5人の生命 幼稚園に巨額賠償(1億7660万円)の判決は正しいのか
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バスがあと少し進んでいれば、園児の命は助かったかもしれない。あの日、ほんのわずかな違いが生死を分けた。偶然だったのか、過失だったのか—そんなことを、裁判所が決められるのか。

生き残った運転手の証言

「出発の指示を出したのは園長先生でした。園児を保護者に少しでも早く引き渡そうと考えたのでしょう。私は高台から下りることに反対でしたが、指示に従う立場だったから……」

送迎バスの乗員で唯一の生存者である運転手は、本誌の取材にこう語った。

〈幼稚園と園長は、遺族に対して賠償金1億7660万円を支払え〉

小さな私立幼稚園に課された賠償金としては、あまりにも巨額だった。2011年3月11日、宮城県石巻市の日和幼稚園で、園児を自宅へ送りに出たバスが津波に流され、園児5名と職員1名が亡くなった。これをめぐる訴訟で、先月17日に仙台地方裁判所が下した判決である。

東日本大震災と大津波による死者・行方不明者は、今年9月時点で合計1万8000人以上に達する。その中で、今回初めて、あの日の行動の「責任の有無」を司法が判断した。

〈最大震度6弱の揺れが約3分間も続いていたから、地震の震源地等によっては巨大な津波に襲われるかもしれないことは容易に予想されることであって(略)ラジオや防災行政無線の放送内容を正確に聴取する必要があったというべきで(略)過失がないということはできない〉(判決文より)