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世界的科学者(米国ウッズホール海洋研究所ケン・ベッセラー博士)が目撃した「原発汚染水の海域」と「放射能汚染の実情」
7月22日の発表以来、汚染水の流出は何度となく報道された。海へ流れた放射性物質はコントロール不能だ〔PHOTO〕gettyimages

今この瞬間も汚染水は海へ漏れ続けている。海はどれほど汚染されているのか。魚は食べていいのか。他にいかなる悪影響を及ぼすのか、いまだ未知数だ。事態を究明するために世界の力を借りよう。

とても深刻な調査結果

「私たちのチームはこれまで4度来日し、原発から1㎞のところまで近付いて海水などの調査をしていますが、汚染水は漏れ続けています。いくら海水で薄まっても、魚がいる場所としては、福島の沿岸は最悪の場所です。残念ながらいくつかのシーフードについては食べられるレベルではありません」

世界最大規模の独立系研究所である米国ウッズホール海洋研究所のケン・ベッセラー博士は福島近海の汚染状況についてこう語った。

福島第一原発の汚染水はコントロールされるどころか、日々新たな問題が見つかっている。10月に入ってからも、高濃度の放射性物質を含む雨水がタンクから溢れ出る事故があったばかりか、原子炉を冷やすために使用した汚染水が新たに漏れていたことがわかるなど、次々と問題が発覚している。

こうした福島の現状は世界中から不安の目で見られているが、福島第一原発事故直後から、一貫してこの汚染水問題の調査に当たってきたのがベッセラー氏だ。

ベッセラー氏の調査の詳細について触れる前に、氏の経歴を簡単に紹介しておこう。

ベッセラー氏は、研究者としてのキャリアの大半を海洋中における放射性物質の研究に費やしてきた世界的科学者。チェルノブイリ原発事故の際にも、黒海の放射性物質の影響を調査・研究している。

福島原発事故でも事故直後の2011年4月、他の日本人研究者と連名で「福島原発から出た放射性物質の海洋環境への影響」という論文をまとめた。この論文は、世界で最も権威のある科学雑誌『ネイチャー』への掲載も決まっていた。ところが、日本の気象庁がベッセラー氏の記述は風評を煽るとして削除を求めた経緯がある。つまり、ベッセラー氏は日本の役所が隠したい内容でも科学者の良心に従って、その危険性を説いてきた反骨の科学者と言える。同氏は言う。

「私たちは研究所以外のどこからもおカネをもらっていません。政府から独立した研究機関が調査することが重要です。日本政府はもっと海洋調査を真剣にやるべきだと思います」

その後もベッセラー氏は、東京大学大気海洋研究所の西川淳助教や、ストーニーブルック大学教授で海洋汚染の専門家であるニコラス・フィッシャー教授らとチームを組んで福島原発事故による海洋汚染の調査を続けており、直近では今年9月8日から14日まで、福島近海の海水サンプルの採取を行ったばかりだ。

一口に海洋汚染の調査というが、この作業は長期間にわたる地道なサンプルの採取と、分析のための莫大な時間を要する。ベッセラー氏は海水と海底の沈殿物の調査を担当している。

「今回の調査では、異なった海域の海水のサンプルを100ヵ所で採りました。ひとつのサンプルにつき20ℓなので合計2tです。20ℓでやっとセシウムのアイソトープ(原子)一つを検出するのに十分な量になる。一方、海底の沈殿物は、あちこちの海底にチューブを差し込んで採取します。これは300ヵ所で集めました。

今回は1週間、船に泊まりこんで作業をしました。時には36時間ぶっ通しで働き、少し眠って、また8時間働くといったペースでした」

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