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大銀行と暴力団その深く長い関係【第3部】組員が語る「マル暴マネー」の現場

最初から返すつもりはない

「既存の暴力団のシノギはほとんどできなくなりました。いまや福島第一原発への作業員派遣におけるピンハネや中小企業への支援金を騙し取ることくらい。覚せい剤の売買やノミ行為でしのいでいる組もあるようですが、いずれだめになるでしょう」

ノンフィクション作家の溝口敦氏が分析するように、暴排条例の施行で暴力団のビジネスは大打撃をうけた。

「キャッシュで全額支払うと言っても、ディーラーが車を売ってくれなくなった」(暴力団幹部)、「兄弟分が市営住宅から追い出された」(元組員)と、暴力団を表社会から締め出す動きも出ている。

だが、行き場を失った暴力団は、その手口をいっそう巧妙化させ、それとはわからないように市民生活に入り込んでいる。

現役の暴力団組員が金儲けの手口の一端を明かす。

「人気の犬や猫をブリーダーから安く買ってペットショップに転売したり、山の一部を買い取ってヤードにして、ワケありの車を解体したりと、ここ数年、ニッチなシノギにシフトしてるね。いま一番いいのが、お年寄り相手の商売。バンに健康食品や下着、介護ベッドなんかを積んで、見てくれのいい若い衆に売りに行かせる。とりあえず契約さえしちまえば、あとはクーリングオフの期間が過ぎるのを待てば勝ち」

一見して儲けは少なそうだが、それだけ暴力団も生き残りのために必死だということだろう。今回問題となったみずほの230件の提携ローン契約の中にも、60回払いのものがあるという。これは反社会的勢力の資金力低下を物語っているのか、それとももっと深い闇とつながっているのか。

ジャーナリストの須田慎一郎氏が解説する。

「いまのところ、暴力団が活動資金確保のため、みずほから組織的に融資を引っ張ったという形跡は見つかっていません。ただ、何件か焦げ付きが出ているのは間違いない(みずほ広報室は否定)。ですが、回収にあたっている様子もないんです。だとするとこれは、結果的に暴力団への利益供与になる。それが彼らの活動資金に回った可能性は否定できません」

元広域暴力団組員の梅木宏治氏(仮名)によれば、みずほが信販会社オリコを間に入れて融資をした「提携ローン」というスキームを、暴力団はいまも利用しているという。

「みずほの件は中古車のローンでしたが、それでは金額が知れています。暴力団のなかにはこのスキームを住宅ローンやリフォームで使う者もいる。業者を抱き込んで、実際は700万円で済む工事の見積もりを1000万円で出してもらうのです。もちろん、業者にはいくらか、バックします」

問題となった提携ローンは、借受人→中古車ディーラー→信販会社→みずほという四者間のローン。このケースでは、ディーラーのところにリフォーム業者が入る構図だ。

「書面上、問題がなければ、信販会社はロクに調べもしないで審査を通してくれます。せいぜい、借受人の職場にウラとりの電話を入れるくらい。一度も面談しないことのほうが多い」

この際、借受人が組員だと審査が通らないので、わざと破門された「なりすましのカタギ」組員か、暴走族やチーマー上がりの「元集団」を立てる。バブル崩壊後、あらたに反社勢力に加わったのが「半グレ」と呼ばれる暴走族上がりの「元集団」である。名簿はなく、本部も持たず、先輩後輩のネットワークで動く彼らの実態を完全に把握するのは不可能だ。

融資が実行されて、リフォーム業者にカネが入れば、あとは借受人と分配して踏み倒すだけ。リフォーム工事自体、行われないケースもあるという。

「借金を踏み倒したことでブラックリストに載せられますが、1年くらいは猶予がある。その間、同じ手口で5~6社からカネを引っ張るわけです。その後は借受人を婿入りさせたり、養子縁組して名前を変えて〝別人〟にして、最初からもう一回同じことをする。今回のみずほの件は、借受人のヤクザ者ばかりが注目されていますが、我々に言わせたら、信販会社と借受人の間に入っているディーラーも怪しいですよ。中には悪いディーラーがいて、借受人とグルになって融資されたカネを懐に入れていてもおかしくない」

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