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大銀行と暴力団その深く長い関係【第2部】銀行×警察×暴力団の戦い ヤクザ担当銀行員は 命がいくつあっても足りません

因縁をつけて怒鳴り上げる

闇社会から銀行員への接触は多くの場合、恐怖と誘惑がセットになっている。それに抗うのは容易なことではない。

「ヤクザが目をつけるのは中間管理職か、気の弱そうな営業マンです。あの連中は一度食いついたら最後、骨の髄までしゃぶろうとします」

こう語るのは、元信用金庫の営業マンである。

「反社会的勢力の連中は、だいたい人を介して接触してくるんですよ。そうでなければ、因縁をつけてくる。たとえば窓口に他人の口座への振り込みにやってきて、わざと間違った名義人の名前や口座番号を書いて、こちらが振り込めないようにする。そうして『あれは大切な決済金だぞ、どうしてくれるんだ』と因縁をつけるわけです」

実に単純な手口だが、実際に新米行員がこういう手合いに脅されると縮み上がってしまう。メガバンクに勤務する中堅行員が、こんな新人時代の話をする。

入行して最初に配属された営業店で窓口業務をしていたとき、見るからにそのスジの人間とわかる男性が、定期預金をつくりたいと言ってきたという。

「ありがとうございますと答えて作業を始めると、その男性は、いきなりカウンターの下を足で蹴り上げ、『何をトロトロやっとんのじゃ!』と怒鳴ったんです。そのとたん、私は思考が停止して声も出せず、凍りついてしまいました。すぐに上司が駆けつけて、その場を取り繕ってくれて助かりましたが……」

世に言う「一流大学」を出て、「エリート行員」となったのに、これまで会ったこともない反社会的勢力と相対する。仕事とはいえ、嫌な役回りだ。こうした恐怖にさらされて精神を病む金融マンもいるという。

他方、反社会的勢力がちらつかせる誘惑に身を任せ、取り込まれてしまう銀行員もいる。ある都市銀行で都内の支店長を務めた男性が振り返る。

「かつての上司は、いつも口癖のように『儲かりゃなんだっていいんだよ』と言っていました。会議ではよく『限界利益を目指せ』と言っていましたが、限界利益というのは、法律に触れないギリギリの線でより大きな収益をあげろ、という意味です。要するに収益をあげるためなら何をやってもよいという考え方に近い。当時はこれが当たり前で、私は疑念すら持ちませんでした」