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大銀行と暴力団その深く長い関係【第1部】あまりに怖すぎてどこも書かない なぜ「みずほ」ばかりが狙われるのか
ガバナンス強化のため、「Oneみずほ」を実現させた佐藤康博頭取だったが……〔PHOTO〕gettyimages

エリート然とした銀行員が冷徹に融資を打ち切ったり、継続を決めたりする。ドラマ『半沢直樹』でも描かれたシーンである。だが、現実は甘くない。その銀行員たちが心底怯え、ときにルールを逸脱してまで融資をする相手、それが暴力団だ。

密告者がいる

みずほ銀行のスキャンダルを暴いたのは、金融庁による検査だった。

大蔵省時代に金融検査部に在籍し、メガバンクの検査に着手した経験を持つ元財務官僚の髙橋洋一氏はこう語る。

「当局が不正をつかむ発端は、ほとんどがタレコミによるものです。検査中に入ってくるタレコミも多く、金融庁に封書で送られてくるのが一般的。封書に差出人名はまずありませんが、その大半は検査中の金融機関内部からのものです。反社会的勢力への融資など、外部からはなかなかうかがい知れないもの。今回もみずほ内部からタレコミがあった可能性が高い」

金融庁検査は、数十人単位の検査官が、対象となる銀行などに常駐するかたちで行われる。

行内に検査官専用の部屋を用意させ、検査官は毎朝、直接銀行へ出勤し、その部屋から検査対象となっているセクションや部へと向かう。そこにも検査官専用の席があり、山と積まれた資料におかしな点が見つかると、「ちょっとあなた、この件、説明してください」と、いきなり行員を呼びつけるケースもある。

「検査期間はメガバンクなら3ヵ月くらいでしょう。検査に入る約1週間前に頭取あてに入検通知をしますが、検査内容についての説明は一切しません」(髙橋氏)

あらかじめ設けられた面談日になると、所管のセクションの担当者が検査官の常駐する部屋に呼ばれ、説明をさせられる。説明役はあくまで検査対象となっている案件担当者で、役職は関係ない。ドラマ『半沢直樹』のように次長が同席するケースはあるが、部長や役員、ましてや頭取が同席することはまずない。

したがって同じ行内であっても検査対象の部署以外の行員は、どこで何が検査されているのか、まったくわからないのだ。

今回、そんな金融庁検査を経て、みずほは行政処分を受けた。しかも、その内容はみずほの「過去」を知る者にとって、またかと言いたくなる「大銀行と暴力団」の関係を浮き彫りにするものだった—。

昨年12月から3月にかけて、金融庁がみずほ銀行に対して実施した検査で問題融資が発覚。グループ企業のオリエントコーポレーション(オリコ)との提携ローンで、多数の反社会的勢力、つまり暴力団関係者との取引があることを把握しながら、2年以上も放置していたことが判明した。

金融庁によると、みずほがオリコを通じて反社会的勢力に融資した件数は230件、金額は約2億円。融資案件の多くは、各地の中古車販売店での自動車購入にともなうローンだという。

「暴排条例の施行を受け、ウチは'10年の12月から、オリコを含む提携ローンの事後審査を半年に1回の割合で行っています。その中で、オリコの融資先の顧客に反社(反社会的勢力)が多数いることがわかったのです」(みずほ銀行関係者)

このみずほ本体の事後審査の結果、自動車提携ローンの顧客に暴力団関係者が含まれているという情報は、みずほ銀行からオリコへと伝えられている。

だが、本来ならばすぐに一括返済を求めるべきところを、「次回からは当該の人たちと契約しないように」と言うにとどめ、何も手を打たなかった。

しかも、そうした問題融資が行われていたことを、コンプライアンス担当役員が把握していたにもかかわらず、経営トップには情報が上がっていなかったというのだ。

その点を問題視するのは、ジャーナリストの須田慎一郎氏である。

「結果的にコンプライアンス担当役員が情報を握りつぶしてしまったというのが、みずほ側の表面上の説明ですが、そんなはずはありません。みずほ内部の話を聞いても、『もしこれが表面化したら大きなダメージになるはずで、そんな重要情報を担当役員レベルが止められるはずがない』というんです。なにしろ、みずほのコンプライアンス委員会の委員長は頭取ですからね。そこに報告が上がっていないとしたら大問題です」

先述したようにこの提携ローンの融資窓口はオリコ。契約者の審査も、焦げ付いたときの補償もオリコが行うことになっている。そのため、みずほにしてみれば直接融資でないぶん、責任は軽いと考えているフシがあるのだ。しかし、

「このやり方は、バブル時に横行した暴力団関係者への迂回融資と同じ構図です」

と『同和と銀行』の著者、ノンフィクション作家の森功氏は指摘する。

「貸し出しの際の信用調査はオリコがやったのだから、責任はオリコにある。そう言わんとするような弁明はまことに卑怯。貸出窓口はオリコでも、契約上、暴力団関係者に融資しているのも、相手が暴力団関係者だと気づいたのも、自分たちなのだから。しかも、少なくともコンプライアンス担当の常務執行役員、つまり経営陣が知っていたということは、組織的な隠蔽と取られても仕方がない。みずほは今回の広報対応もお粗末でしたが、過去にシステムダウンを起こしたときも、問題を明らかにしようとしなかった。つねに隠そうとする隠蔽体質があります」

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