古賀茂明 日本再生のために「TPP交渉に見る秘密主義とマスコミ・国民の責任」「みずほ銀行の暴力団融資と半沢直樹は同根」
TPP交渉参加を決めた3月15日の記者会見の様子〔PHOTO〕gettyimages
▼古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジンVol069 目次

―第1部― 日本再生のために
 1.TPP交渉に見る秘密主義とマスコミ・国民の責任
 2.みずほ銀行の力団融資と半沢直樹は同根
 3.ストーカー対応に見る警察の文化
 4.ツイッター参事官とブログ課長が示す公務員制度の問題点
―第2部― 読者との対話
―第3部― 古賀さんのスケジュール

1.TPP交渉に見る秘密主義とマスコミ・国民の責任

元々聖域ではなかった5品目

TPP交渉で、「聖域」と言われたコメなどの5品目について、関税撤廃の交渉に入ることが確実となった。今年2月の日米首脳会談後の記者会見で、安倍総理は、「TPPでは聖域なき関税撤廃が前提ではないという認識に立った」と胸を張った。日本のメディアはその言葉をそのまま伝えたが、一方のオバマ大統領は会見をしなかった。双方が会見すると声明の解釈に食い違いが出るからだ。

声明そのものには安倍総理の言うような言葉はなかった。「一方的にすべての関税撤廃をあらかじめ約束するよう求められるものではない」と書いてあるだけだ。交渉をする前に「あらかじめ」、他国の態度に無関係に自国だけ「一方的に」すべての関税撤廃を約束するなどという国があるはずがない。当たり前のことを書いて、それを安倍総理がことさら大きな成果として強調して見せただけのことだ。

さらに、「日本には一定の農産品」というような「センシティビティ(重要品目)が存在する」ことを認めさせたと言うが、だから関税撤廃をしなくて良いとはもちろん書いていない。

「『一定の』農産品」「センシティビティ(重要品目)が存在」など、さまざまな言葉をちりばめて、あたかも5品目が聖域となったかのように装ったのだ。直後の本メルマガ(※)でもそのことを指摘したが、マスコミは、そういうことはあえて明確に報道しなかった。安倍政権と闘うのが嫌だったのだ。

結局、わずか半年余りで、やはり、それは嘘だったことが露呈してしまった。

騙された国民は蚊帳の外

しかし、国民から見ると、こうした構図は良くわからない。聖域だったのに何故急に関税撤廃交渉の対象になってしまうのか。

良く考えたら、交渉の経緯がほとんど明らかにされていない。「秘密主義だ! おかしい!」という批判が今頃出ている。

もちろん、政府の姿勢には問題がある。重要5品目の細目586品目とは何かと聞いてもはっきりしたことは言わないという。TPP交渉での各国の守秘義務は、交渉途中の各国の立場や具体的な提案などが報道されると各国内での調整が、政府の考えているような段取りで進められなくなり、その結果、より良い内容の合意に持ち込めなくなる、という考え方によるのだろう。

そうだとすれば、586品目が何かということは各国に提示されているわけだから、これを明らかにしても、各国の交渉を邪魔するものではないし、日本の立場が害されるわけでもないので、公表することはまったく問題ないはずだ。結局、これを出すと、細かいことをいろいろ聞かれて面倒だから言わない、ということにしたのだろう。

つまり、これは、TPPの問題ではなく、日本政府の情報公開に関する考え方の問題だ。

もっと、積極的に公開すべきだということになるが、ここで、指摘しておきたいのは、情報がどれくらい公表されるかは、その国のマスコミと国民の情報公開に関する態度によって決まるということだ。

日本の場合は、マスコミが情報公開について、極めて感度が鈍い。今進められている秘密保護法案についても、ほとんど無批判のまま、とんでもない規制が導入されようとしている。消費税の軽減税率の対象にしてもらいたい新聞社は、ほとんど抵抗する姿勢を示していない。

こんな国では、TPPの情報が出てこないといくら批判しても、政府は高をくくっていて、マスコミはどうせ本気で闘う気はないだろうと見切っているのだ。もし、情報を出さないで、最後に結果だけを示した場合、マスコミが大々的に批判を展開し、TPP反対キャンペーンが始まるかもしれない、その結果、国会での条約批准に支障が出るかもしれない、と政権が思っていれば、そうならないようにある程度の情報は出すはずだ。しかし、今のところ、マスコミは、どんな案件でも安倍政権に本気で反対する姿勢を示したことはない。政権は安心しきっている。

日頃から、お上任せで、結果さえ良ければそれでよしとする国民気質も、こうした風潮を助長する。結局、権利の上に眠る者は権利を失うのである。情報公開でつまづけば、政権が倒れるとか、少なくとも、政策の実施が困難になる、という緊張感を政府に持たせることができるかどうか。それがなければ、急に「密室のTPP協議反対」と叫んでみても、犬の遠吠えになってしまうのである。マスコミの根性が試される。