今夏は「異常」と気象庁検討会分析
最高気温41度、豪雨、竜巻、特別警報発令[気象]

竜巻の被害を受けた埼玉県越谷市の住宅街=9月3日

多くの人を熱中症にした猛暑、ダムの貯水率低下を招いた少雨、各地で家の屋根を飛ばした竜巻、「これまでに経験のないような」大雨を降らせた台風……。6~9月にかけて、日本列島は極端な気象に振り回された。専門家らでつくる気象庁の異常気象分析検討会(会長=木本昌秀東大大気海洋研究所教授)は9月2日、今年の夏(6~8月)について「異常気象だった」と位置づけた。

異常気象分析検討会は社会経済などに影響を与える猛暑や豪雪などが発生した場合に要因などを分析する組織で、2007年に設置された。夏の猛暑について検討するのは、過去最も暑い夏となった10年9月以来3年ぶりだ。

今年は全国927観測地点中125地点で最高気温を更新し、18地点でタイ記録となった。また最低気温も74地点で高い記録を更新した。高知県四万十市では国内観測史上最高気温41・0度に達した。秋田、岩手、島根、山口など日本海側を中心に、過去に経験のないような豪雨が降り、一方で東日本~西日本の太平洋側や九州南部で記録的な少雨となった。こうした気温、雨の降り方の「極端さ」が今回の検討会での分析対象となったが、9月になっても関東地方で竜巻が相次いだり、台風18号の接近に伴って、京都、滋賀、福井県に8月30日に運用を開始したばかりの「数十年に一度の気象現象」が起こった時に発表される特別警報が発表されるなど、極端な気象現象は後を絶たなかった。

今年の極端な天候について、検討会はインドネシア周辺などで海面水温が平年より高かったことをあげた。これにより、大量の雲が発達し、日本付近の太平洋高気圧とチベット高気圧を強める働きをした。高気圧が強まると下降気流が強まるため、雲が出来にくくなる。晴れの日が多くなれば、気温は当然高くなるとの理屈だ。太平洋高気圧が平年より西側に強く張り出していたため、特に西日本で気温が高くなった。

その一方で、西側に張り出した高気圧の縁を回ってくる暖かく湿った空気が日本海側に流れ込んできたことが、秋田、岩手、島根、山口などの豪雨を生んだ。猛暑によって日本周辺の海面水温が高く、空気がたっぷりと水蒸気を含みやすくなっていたことも豪雨の強さを増したと考えられるという。

分析に社会的な影響も加える

気象庁は、数十年間に1回程度の現象、あるいは人が一生の間にまれにしか経験しない現象を「異常気象」としている。これには大雨や強風などの短時間の現象や数か月も続く干ばつなども含まれる。同庁での地球環境監視業務においては、30年に1回程度で起こる現象を異常気象と定義しているが、木本会長は検討会終了後に気象庁で開かれた記者会見で「社会的な影響も大きく、総合すると異常気象だったと言わざるを得ない」と結論づけた。

そして、今回の猛暑や豪雨だけでなく、検討会当日に埼玉県越谷市や千葉県野田市などを襲った竜巻なども含めて、それ自体が地球温暖化の影響だけで生まれたと単純に言うことはできないものの、今後の気温上昇、局地的な強い雨など増加について地球温暖化の影響に言及した。

では、地球温暖化に関する一般の人の意識はどうだろうか。みずほ情報総研(東京都千代田区)が8月に実施し、9月にまとめた「地球温暖化影響に関するアンケート調査」によると、回答者の94%が「人類が地球温暖化の影響を受けつつある」と回答し、さらに73%は地球温暖化の影響は「既に現れている」と回答した。ただ、地球温暖化が誰に大きな影響を及ぼすかについての質問に対しては、自分自身より自分から空間的・時間的距離が遠くなるほど影響を受けると考える人が多く、完全に自分のこととして受け止め切れていない結果となっている。

しかし、地球温暖化の影響は実際には将来や外国ではなく、現時点の日本にすでに現れてしまっているといえる。気象庁は都市化の影響が少なく、長期間の観測が行われている17観測地点の平均気温の平年との差などを調べているが、1980年代後半から急速に気温が上昇し、顕著な高温を記録した年はおおむね90年以降に集中している。

そして、その傾向はさらに強まると考えられている。気象庁が今年3月に公表した「地球温暖化予測情報第8巻」によると、近未来(2016~35年)には、東日本太平洋側の年平均気温は現在より約1度上昇し、最高気温30度以上の真夏日と最低気温25度以上の熱帯夜の日数はそれぞれ5日以上増加すると予測されている。このほか、将来的な台風の巨大化や洪水リスクの増加などを示す研究結果なども出てきている。

そうした状況を見聞きしているからか、みずほ情報総研のアンケート結果では、地球温暖化の影響として最も不安に感じるものとして「ゲリラ豪雨の増加」「海面上昇」「農作物への影響」など的確な回答が多かった。ただ、自分のこととして受け止め切れていないためか、地球温暖化の影響に対する備えについては「まったく考えていない」「どちらかといえば考えていない」とした人が半数以上(61%)にいた。現状では十分ではないといえる。

検討会の木本会長は記者会見で「残念ながら温暖化の影響はなくなったり減ったりすることは考えにくく、さらに本格化する。今回観測した猛暑の記録更新ラッシュや今回経験したような強い雨は、今後温暖化が進めば、減ることはなく、回数も増えて強さも増す。竜巻や集中豪雨も増えると考えていいと思う。雨の降りにくい場所、降って欲しい場所で降らないという、雨の極端化も予想される」などと具体的に予想される現象についても述べ、「今回だけでなく、気象災害、異常天候を念頭に対処していく必要がある」と話した。

地震や津波などがいつ自分の住む地域を襲うか分からないように、高温、豪雨、突風など極端な気象現象もいつ身近で起こってもおかしくない時代といえるだろう。

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