佐藤優のインテリジェンス・レポート
「山本一太大臣の発言でゲームのルールを変更しようとするロシア外務省---この露骨さは一部勢力の北方領土返還への危惧の表れ」ほか

佐藤優「インテリジェンスの教室」Vol022 インテリジェンス・レポートより
【はじめに】

ここ3週間は、宇野弘蔵編『資本論研究』(全5巻、筑摩書房、1967~68年)を読んでいます。21世紀の国際情勢を読み解く基礎に宇野経済学の遺産が活かせると思うのですが、それをどう表現したらよいか、悩んでいます。
国際関係が、シリアに対する米国の外交的失態によって構造的に変化しています。この問題については、日本の新聞だけを読んでいても、事態の重要性がわかりません。日本でも容易に手に入る『インターナショナル・ヘラルドトリビューン』に目を通すだけでも、国際情勢を見る目が変化します。

【佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」vol022 目次】

―第1部― インテリジェンスレポート
 ■分析メモ No.51 「北方領土ビザなし交流をめぐるロシア外務省情報出版局コメント」
 ■分析メモ No.52 「シリア・アサド政権の外交攻勢」
―第2部― 読書ノート
 ■読書ノート No.66『知らないと恥をかく世界の大問題4 日本が対峙する大国の思惑』
 ■読書ノート No.67 『超訳小説日米戦争』
 ■読書ノート No.68 『基礎経済学大系2マルクス経済学』
―第3部― 質疑応答
―第4部― 文化放送「くにまるジャパン」発言録
―第5部― 今後のラジオ出演、講演会などの日程
国後島の様子---〔PHOTO〕gettyimages

分析メモ No.51「北方領土ビザなし交流をめぐるロシア外務省情報出版局コメント」

【事実関係】
1.9月26日、ロシア外務省が公式ウエブサイトに「クリル諸島(引用者註*北方領土に対するロシア側の呼称)訪問後の山本一太日本国沖縄及び北方対策担当・科学技術政策担当・宇宙政策担当大臣の発言に関するロシア外務省情報出版局のコメント」と題する文書を掲載した。

【コメント】
1.
ロシア外務省は、北方四島とのビザなし交流をめぐって、これまで日露間に形成されてきたゲームのルールをロシア側が一方的に変更しようとしている。このような露骨な動きは初めてのことだ。

2.―(1)
閣僚を含む政治家が北方領土を訪問した後に根室で記者会見を行うのは恒例だ。ロシア外務省もそのことを熟知している。

2.―(2)
仮に山本氏が国後島、択捉島で、ロシア系住民に「ロシアは法的根拠なく北方領土を占拠している。皆さんもこの真実をよく理解し、日本政府の北方領土返還要求を支持すべきだ」と訴えたならば、ロシア外務省には「係争地で日本側の立場を一方的に主張することは、平和条約交渉に関して平穏な環境を維持するというプーチン大統領と安倍首相の合意に反する」と主張する道理がある。

しかし、日本の領土で、日本が実効支配している根室において、閣僚である山本氏が「再び領土返還についての思いを強くした」と発言したことに対して、ロシア外務省が「先鋭なテーマ」(北方領土問題)についての発言をするならば、今後、日本の政治家のビザなし交流への参加を認めないなどという恫喝めいた主張を行うことは、まさに北方四島の帰属に関する問題を解決して平和条約を締結するという日露間の合意に反する行為だ。

4.
9月5日のサンクトペテルブルグにおける日露首脳会談で、安倍首相とプーチン大統領の信頼関係は一層深まった。今後の交渉においてプーチン大統領が北方領土問題で日本に譲歩をするのではないかと危惧する一部勢力の動きがこのようなコメントになって現れたのであろう。

5.―(1)
ここで日本側が弱気になって、ビザなし交流に参加する政治家が今後、根室での会見で領土問題に言及しないようになると、ロシア側は政治家だけでなく記者や返還運動関係者の発言にも干渉してくるようになる。

5.―(2)
外交にはお互いの立場がある。「お互いに国内向け発言については反応しない」という紳士協定を日露外交当局で確立しておくことが重要になる。

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