サッカー
二宮寿朗「マリノスに見るベテランの価値」

「オッサン集団」が元気だ。
 レギュラー平均年齢31歳を超える横浜F・マリノスが2004年シーズン以来となる優勝を目指し、激しい首位争いを演じている。第27節ベガルタ仙台戦(9月28日)、第28節ヴァンフォーレ甲府戦(10月5日)と2試合続けてスコアレスドローに終わり、首位の座を1カ月ぶりに昨季覇者のサンフレッチェ広島に譲ってしまったが、試合の内容自体は決して悪くない。残り6節、勝ち点3差に4チームがひしめく混戦ではあるが、粘り強い戦いを見せる「オッサン集団」には、再び主役に躍り出てきそうな雰囲気が漂っている。

常識を壊す“じいさん”の快進撃

 マリノスは主力4選手が35歳オーバーである。
“不動のエース”MF中村俊輔と“守備の要”DF中澤佑二が35歳で、チームトップの16点をマークしているFWマルキーニョスが37歳、そして左サイドバックのDFドゥトラは40歳だ。

 90分間を走り切るスポーツであるサッカーは体力勝負の要素が少なくない。ゆえにプロ野球やゴルフと比べても、プレーヤーの選手寿命は短い。30歳になるとベテランの範疇に入り、J1の第一線で活躍している35歳オーバーの選手となるとその数は限られてくる。

 ちなみに上位チームで言えば1位・広島がMF中島浩司(36歳)1人、3位・浦和レッズがDF山田暢久(38歳)とGK山岸範宏(35歳)、4位・鹿島アントラーズはFWジュニーニョ(36歳)1人で、5位・セレッソ大阪には1人もいないというのが現状だ。30歳過ぎで「オッサン」なら、35歳オーバーの中村俊輔は「じいさんでしょ」と言って笑う。

 だが今年のマリノスの快進撃はそんなサッカー界の常識を壊してきているとも言える。中村はこう言う。

「じいさんとじいさんがくっつくと面白いということ。技術と判断の速さがあって、お互いの感覚やサッカーの経験値が似てたりするから、相手がパワーとかスピードでガッと来ても回避できたりする。サッカーをよく知っている連中とやれているから、お互いの感覚を合わせやすい」

 若さに任せたエネルギッシュでスピーディーなサッカーではないものの、どしっと構えて動じず、巧く駆け引きしながら戦いにメリハリをつけるスタイルにはビンテージの味わいすら感じる。ここまでリーグ戦で喫した5敗のうち、2点差以上の敗北は一度もないのだ。抜群の安定感は、「大人のサッカー」と呼ぶにふさわしい。