汚染水問題にひそむ課題---抜本対策の問題点と国費投入の懸念事項について

2013年10月09日(水) 馬淵 澄夫
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「緊急対策」と称する限り、長々検討を続けるのでは意味がない。繰り返しになるが、多重防御の実施が早期に求められるのだ。

抜本対策「凍土遮水壁」の課題について

政府は、抜本対策として、建屋四方の地下を凍土、すなわち凍結管を地中に入れ土を凍らせて壁をつくり、地下水の流入・流出を止めるという対策を検討している。汚染水対策委員会の5月30日の報告書では、凍土方式が適切だとした理由の一つとして、「遮水能力が高く、地下水の流入抑制効果が高いこと」を挙げている。

その判断の前提として、凍土方式による遮水壁の透水係数(壁が水をどの程度通すか)を「0m/s」と評価している。他の工法が10のマイナス8乗から9乗(小数点第8位から9位)というレベルで評価されているのと比べると、ゼロという表現は大雑把だ。

また「凍土遮水壁・透水係数ゼロ」については実験やシミュレーション等のデータに基づいた数字ではなく、「工学的に、水が凍った場合、水は動かなくなる」という理論上のものに過ぎない。

汚染水対策委員会の報告書では、遮水能力は、凍土方式採用の重要な根拠の一つとされており、それが単に机上のもの、しかもシミュレーションさえしていないというのは無責任かつ恣意的だ。

仮に、理論上透水係数がゼロであったとしても、それは、埋設物等がなく、水分を含んだ土が均一にある状態でのことである。福島第一原発の現場では、配管等の埋設物があり、岩や石、粘土や砂、様々な種類の土が何層にもわたって存在する。当然だが、水のないところでは凍らない。

また、地下には、「空隙(くうげき)」と呼ばれる様々な粒度の砂や石がかみ合う部分にできる隙間がいくつもある。そのような僅かな隙間は凍らず、そこから水が漏れ出る可能性もある。

さらに、地下水には流速があるという点も注意しなければならない。一般の土木工事における地盤凍結工法は、地下20mから50mのトンネル工事で使われることが多く、大きな地下水流がない場所での施工が基本だ。地下水流が速くなかなか凍らない場合、水ガラス注入などの止水工事を行うこともある。

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