「講座: ビジネスに役立つ世界経済」 【第20回】 日本経済に先行するイギリス経済?

2013年10月03日(木) 安達 誠司
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まず、オリンピック需要を中心とした固定投資が2012年10-12月期以降、急減している点が指摘できる。明らかにオリンピック需要による需要の先食いの反動であろう。鉱工業生産指数も前年比マイナスが続いており、低迷が長期化している。個人消費も小売売上に代表されるような自動車以外の部分は低迷が続いており、サービス業の業況も思わしくないことが推測される。

また、イギリスといえば、ロンドンを中心とした金融業のプレゼンスが高いが、金融取引にともなう手数料収入の出入りを含むサービス収支は輸出(例えばロンドンを拠点とする非英国籍の金融機関の本店への送金等が含まれる)、輸入(ロンドンへ流れる金融取引に伴う送金)とも減少傾向が続いているし、イギリスの金融機関が海外で稼いでいるお金である投資収益も2012年10月以降、減少が続いている。すなわち、イギリスでは、製造業、金融、小売を含むサービス業が全般的に停滞を続けている。

日本が学ぶべきイギリス経済の経験

そんな中で、2013年に入ってからイングランド銀行は再び量的緩和を見送っている点も大きな懸念材料である。イングランド銀行のバランスシート残高は2013年に入ってからほぼ一定で推移している。

結局、現在のイギリス経済をどうにか下支えしているのは、自動車購入の政策効果のみということになる。イングランド銀行で政策委員の経験があるアダム・ポーゼン氏は「フォーリン・アフェア」誌のインタビューの中で、量的緩和についての最先端の研究を行い、かつ、最先端の実務家でもあったマーヴィン・キング前イングランド銀行総裁ですら、将来のインフレ懸念のあまり、その任期終盤には、景気低迷にもかかわらず、追加の量的緩和に極めて消極的であった点に言及している(もしくは、量的緩和政策は、金融システム危機を回避するための政策であって、マクロ経済政策としての評価はイングランド銀行ですら定着していないことが明らかになった)。

日本の政策当局者にとって、以上のような消費増税実施後のイギリス経済の経験から、学ぶものは多いはずである。

ただ、安倍首相が消費税率引き上げを決めてしまった今、今後の日本経済の行方を考える上で注意すべき点は、(1)消費増税実施後の消費の減速(2)設備投資を中心とする企業動向の停滞(3)それらを相殺するための政策発動の必要性(そして、それ故の公的需要の肥大化)、であろう。

ちなみに、イギリスは、消費増税のほかに、国公立大学の授業料の値上げなどの財政再建措置を採ったが、国家財政の状況が改善した様子はない。

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