ドイツ
ドイツ第2のビール祭「フォルクスフェスト」に行ってみた
フォルクスフェストの会場でビール樽を運ぶ祝祭用の馬車 (筆者撮影)

ドイツでこれほどたくさんの酔っ払いを見るのは久しぶりだ。シュトゥットガルト中央駅、夜の11時。その日に始まったフォルクスフェストからの帰還客だ。大声でワイワイ騒ぎながら、皆、足元が覚束ない。市電の中は、すでに車両全体がビール臭い。

シュトゥットガルトのフォルクスフェストというのは、世界的に有名なミュンヘンのオクトーバーフェストに次ぐ、ドイツ第2のビール祭りだ。今年はミュンヘンより1週間遅れて、9月27日に始まった。そして10月13日、夜9時の花火大会を持って終了することになっている。

ドイツ人はお酒に強い。体が大きい分だけ血液の量も多いのか、すごい量を飲んでも、酩酊することが少ない。おそらく、公衆の場での酔っ払いを、ドイツ社会が日本ほど大目に見ないという理由もあると思うが、街中を千鳥足で、歌を歌いながら歩いているような人もあまり見かけない。とことん飲みたい人や、お酒を飲むと歌いたくなる人は、家で思い存分やっているのかもしれない。

ところが、秋と春に開催されるビール祭りだけは例外だ。期間中は、会場となっている広大なゲレンデまで臨時電車も出るが、夜10時以降になると、電車は幸せそうな酔っ払いで超満員になる。当然のことながら、しらふでここに紛れ込んでしまった仕事帰りの人たちは、かなり辟易。「フォルクスフェストなんて、早く終われ!」という面持ちだ。

ドイツで好んで飲まれているのは、たいていは地ビールだ。ドイツ全国では、1200以上の醸造所があるらしい。日本各地の地酒のようなものだ。ただ、日本と違うのは、ドイツ人の地ビールに対する貞節度。全国規模で販売されているビールもあるが、たいていの人々は、律儀に十年一日、お爺さんもお父さんも飲んできた昔ながらの地ビールをしっかりと飲む。それに比べると、日本人はかなり浮気性だ。地元のお酒には、あまり拘らない。

長女のボーイフレンドから警告のメールが

仮設の遊園地

さて、シュトゥットガルトの中央駅で酔っ払い軍団に遭遇した3日後、突然、フォルクスフェストに行ってみようかという気になった。もう15年は訪れていない。ただ、夜は、予約しないと席は見つからないだろうし、正直言って、あの喧騒の中に座りたいとも思わない。そこで、「よし、昼間に行こう!」と思い立った。

ビール祭りは、ミュンヘンにしろ、シュトゥットガルトにしろ、普段は広大な原っぱである場所に、ビール会社のテントが建てられ、無数の屋台やゲームセンターやお化け屋敷が出店し、そのうえ、ハイテクの遊具が天高く聳える巨大な遊園地が出現する。この2週間のために、数ヵ月も掛けて組み立てるのだから、利益の大きさが偲ばれるというものだ。ちなみに、オクトーバーフェストでは、期間中に500万リットルのビールが飲まれ、50万羽の鶏の丸焼きが食されるという。

ビール会社のテントのビアホールがどのくらいの規模かというと、大きい物なら収容人数が6000人を超える。ホールの中ではバンドが演奏している上に、皆の話し声が反響するので、話し声はたちまち怒鳴り声となり、しかも、大声で怒鳴っても、隣の人の言っていることはよく聞こえない。そのうち、アルコール消費量の上昇と共に混沌はさらに深まり、皆が肩を組んで歌い出したり、テーブルの上で踊り出す人も出てくる。いずれにしても、私はこういう雰囲気を好まない。何が楽しいのかもわからない。

ドイツ人は大きく誤解されている面があり、彼らは常に皮の半ズボンを穿き、羽根の付いた帽子をかぶって、毎日ビールの大ジョッキを片手に、浮かれていると思われているようだが、それは間違いだ。まさにこういう事態を恥ずかしいと思っているドイツ人も、結構多い。

その証拠に、私がフォルクスフェストに行くと宣言したその晩、それを聞き知った長女のボーイフレンドLが、即刻メールで警告してきた。「あんなところに行くのは止めた方がいい。僕は去年、初めて行ったけど、あの凄まじい警官の数、そして、1000台もの救急車(大げさ!)を見て以来、フォルクスフェストというと嫌悪感しか感じない」と。

確かにフォルクスフェストでは、暗くなると、酔っ払いの乱闘を防ぐために物々しい数の警官が配置されるし、酔いつぶれた客の救助で、救急車も大忙しだ。考えてみればバカバカしい。しかし、敢えて言うなら、それと同じ光景は、サッカーのブンデスリーガの試合でも毎回繰り返される。そして、多くのドイツ人が、こういう事態を苦々しく思っている。ひと口にドイツ人と言っても、いろいろな人がいるのだ。

そういえば、ドイツ人は皆、ビールが大好きというのも、正確な情報とは言えない。ワイン党も結構多い。そういう私も、ドイツでビールは1年に数回しか飲まない。フォルクスフェストにもいかない。その代わり、8月の終わりのワイン祭りには、よく出かける。

民族衣装ディルンドゥルを着た女性
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