「若い女性はラブストーリーが好き」は過去の話!? マイナス要素をプラスに変えた『半沢直樹』大ヒットの構図とは
TBS日曜劇場『半沢直樹』公式HPより

マイナスにマイナスをかければ、プラスになる。にもかかわらず、どうも最近のドラマ制作者は、マイナスを排除し、プラスを積み上げることばかり考えてきたのではないだろうか。

「大ヒット作のリメイクなら一定の視聴者が見込める」「人気アイドルを起用すれば、ファン層が取り込める」---。まるで、低迷が続く日本の家電品の開発思考と同じではないか。プラスばかりを追い求め、マイナスになりそうなことは避けてしまうから、独創的なモノがつくれず、大ヒット作がなかなか誕生しない。

プラスを積み上げずに生まれた型破りな大ヒット作

何を書きたいのかお分かりだろう。類い稀なる大成功を収めた『半沢直樹』(TBS)のことだ。主人公の半沢(堺雅人)を始め、登場人物は男ばかり。恋の話は一切登場しない。どちらも1990年代以降、ドラマづくりにおいてマイナスとされてきたことである。

事実、CS放送「LaLa TV」で8月に放送された『THEドラマカンファレンス7月クールレビュー編』では、視聴者の中から選ばれた批評者の女性が、「(『半沢直樹』は)難しい、つまらない」、「ラブ的な要素がない」などと酷評した。けれど、それは一部の声に過ぎず、TBSなどの各種調査によると、この男臭いドラマの視聴者は女性のほうが多かった。性別・年齢を問わず、幅広い層に受け入れられなければ、最終回で42.2%という途方もない高視聴率は得られない。

「若い女性はラブストーリーが好き」---。それは過去の成功例に基づく一部ドラマ制作者の思い込みに過ぎないだろう。確かに過去にはそんな時代があったのかも知れないが、少なくとも今は違うはずだ。男女雇用機会均等法の施行から約30年。もはや職場において男女の区別など許されない時代なのだから、「男の関心は仕事」「女の興味は恋」などという陳腐で単純な図式も成り立つはずがない。

『半沢直樹』の出演陣には、「数字(視聴率)を持っている」とされるアイドル的な役者もほとんどいなかった。

堺は、2012年の『リーガル・ハイ』(フジ)で、ドラマ各賞の主演賞をほぼ独占したが、ほんの数年前までは助演が中心。アイドル的な役者とは対極に位置する人。TBS『官僚たちの夏』(2009年)などに登場し、やたら巧い演技を見せつけていたが、主演に起用されるまでには、やや時間がかかった。『南極料理人』(2009年)や『クヒオ大佐』(同)など、早くから主演作が次々と撮られていた映画とは違う。映画はラブストーリーの数がドラマほど多くないためかも知れない。

原作者・池井戸潤氏の作品のドラマ化も、必ずしもプラスとは思われていなかった。当代屈指の人気作家であり、作品の質も極めて高く、『空飛ぶタイヤ』(WOWOW)など複数の作品が映像化されていたが、高視聴率を得たドラマはないからだ。

また、現段階では松本清張や山崎豊子らのような「国民的作家」とまでは呼ばれていない。つまりTBS制作陣が純粋に原作の良さに惚れ込んだことで生まれた大ヒットだった。

原作は群像劇の範疇に入るが、ドラマでは半沢にフォーカスを絞ったことで、より分かりやすくなった。逆に国民的作家の原作をほぼ忠実にドラマ化したが、大失敗した例も過去にはある。これもプラスだけを追いかけてしまった結果だろう。

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