「息子と僕のアスペルガー物語」 ライフ
奥村隆「息子と僕のアスペルガー物語」【第39回】
「あなたの育て方が悪いから息子さんはASDになった」と言う医師

【第38回】はこちらをご覧ください。

しばらく息子の顔を見ていない

僕はしばらく前から、非常に忙しい毎日を過ごしている。その理由はたった一つ、「東京オリンピックが決定したこと」にある。

9月7日(日本時間8日)にブエノスアイレスで開かれたIOC総会で、2020年のオリンピック開催地が東京に決まったのはご存じの通り。それを受けて僕は、担当している番組で、オリンピック絡みのVTRを連日のように制作し、放送することになった。

こう言うと、「ASD(自閉症スペクトラム障害)を抱えている奥村さんは、予測していなかったオリンピック開催地決定のニュースのせいで、パニックになってしまったのではないか」と心配してくださる方もいるかもしれない。

確かに、この決定も、それを受けた日本国内の盛り上がりも、僕にとっては事前に想定していた話ではない。だから、矢継ぎ早に関連した番組の仕事を命じられた直後は、焦りのような強い感情が湧き上がってきて、すぐには頭も身体もうまく動かなかったのは事実だ。

しかし、実際に仕事が始まってみると、その内容はある程度事前にスケジュールが立てられるので、感情の激しい揺れは収まった。むしろ、あまりにも忙しいことにやや閉口気味である(ただし、忙しさによって僕がパニック状態に陥ることはない。パニックになって精神的に恐慌をきたすより、多忙による疲労の方が、僕にとってはつらさが少なく、まだましである)。

そういう事情で、取材や編集などの作業に忙殺され、ほとんど自宅に帰れていないので、息子の顔もろくに見ていない。妻はどうやら、息子について相談したいことがあるような気配なのだが、おそらくはこのところ超多忙になった夫を気遣って、何も言わない。

したがって僕は、ここ2週間あまり、息子に何らかの変化が起こっているかどうかを把握していない。妻が何も言ってこないのは、特に重大なことは起きていないからだろうと自分勝手な推測をしている(妻の辛抱強さと寛容さに甘えているわけで、何とも申し訳ない)。

だからというわけではないが、今回もまた読者からの質問にお答えしたいと思う。まずは前回、回答を保留したあの質問から。ただし、すべての回答が、あくまでも僕の個人的な体験、学習、感想などに基づくものであることは、あらかじめお断りしておく。

僕も自分なりに、いろいろ資料や書籍を読んで発達障害やASDに関する知識を蓄積したつもりだが、当然ながら素人勉強であり、限界がある。厳正なデータや学説や治療を求めている方や、深刻な状況にある方は、きちんとした専門家に当たって頂きたいと思う。