雑誌
話題の本の著者に直撃! 福井晴敏
「M資金」を知らない若者よ、
世界経済はもう限界だ!

ふくい・はるとし/'68年東京生まれ。'98年『TwelveY.O.』で江戸川乱歩賞を受賞し小説家デビュー。'99年『亡国のイージス』で大藪春彦賞、日本冒険小説協会大賞、日本推理作家協会賞長編部門をトリプル受賞。'03年『終戦のローレライ』で吉川英治文学新人賞、日本冒険小説協会大賞をダブル受賞。他の著作に『Op.ローズダスト』など。『人類資金』は全7巻で、現在3巻まで刊行されている〔PHOTO〕小檜山毅彦

取材・文/伊藤淳子

―「M※資金」をテーマにしたのは、阪本順治監督との話がきっかけだったそうですね。

 阪本さんから「『M資金』をテーマに映画を撮りたいんだけど、一緒にやらないか」と言われたとき、直感的に「面白いテーマだな」と思いました。ただ、一方で不安もよぎりましたね。若い人にも読んでほしいけれど、いまの若者の大半はM資金なんて知らないだろうから、興味を持ってもらえるだろうか、と。だから「M資金とは何だったのか」という謎解きの話ではなく、M資金を題材にいかにして世界経済の問題点を描くか、に腐心しましたね。

―リーマンショックをはじめ、この作品には行きすぎた資本主義への痛烈な批判がちりばめられています。ご自身もいまの世界経済の状況について相当な危機感をお持ちなのでしょうか。

 いまの社会を動かしているシステムはそう長持ちしないだろう、ということは昔から漠然と感じていましたが、経済のシステムそのものが限界にきていると実感したのは、'08 年のリーマンショック以降です。

アベノミクスは無謀なイス取りゲーム

 物ごとには「これだけ満杯にしたら完成」というゴールがあるのに、経済に関してはそれがない。もうこれ以上は儲けられないという限界域にとっくの昔にたどりついているにもかかわらず、たとえば人件費や固定費を減らすといった数字上の操作によって、成長し続けているかのように見せかけてきた。

 経済が成長すれば国民は幸せになるのが本来の形だったはずなのに、見せかけの成長により、〝国民が幸せ〟どころかむしろ〝国民にしわ寄せ〟という状態になってしまったんです。

※M資金……GHQが日本占領の際に日本から接収したと噂される財産。現物が確認されたことはないが、昭和30年代から現在にいたるまで、M資金を巡る詐欺が跡を絶たず、財界人や芸能人もその被害に遭っている