不況こそビジネスチャンス! 
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「禁欲と強欲 デフレ不況の考え方」吉本佳生さんに聞く

 2010年3月15日、日本政府は景気判断を8ヵ月ぶりに上方修正した。景気回復について「着実に」との表現を加えたのである。しかし、景気回復を本当に実感している人は少ないだろう(どこが着実なのか、納得できない人がほとんどであろう)。デフレ(物価下落)が続き、失業率が高い状況に変化はないからだ。

吉本佳生(よしもと よしお)〔エコノミスト〕
1963年、三重県生まれ。名古屋市立大学経済学部卒業後、住友銀行勤務を経て、同大大学院経済学研究科満期退学。
  大学や企業研修などで、生活経済学、国際金融論、経済数学、ファイナンス論などの講義・演習を教える経験をもち、『スタバではグランデを買え!』『デリバティブ汚染』など著書多数。最新刊は、社会学者の阪本俊生と書き下ろした『禁欲と強欲 デフレ不況の考え方』(講談社刊)。

 こうして構造的な不況が続く日本だが、特に深刻になったのは2008年秋のリーマン・ショック以降であり、直接的にはアメリカの金融危機が原因だったようにみえる。

 また、日本経済の長期停滞のきっかけは、株価などのバブルの崩壊であり、その背後には日銀の金融政策の失敗があると指摘されることが多い。

 表面的には、金融バブル、金融政策、金融危機、つまり「金融」こそが不況を引き起こした根本原因だと考えられやすいのである。

 強欲な金融機関がバブルを引き起こし、やがて金融危機を引き起こす一方で、金融政策はむしろ混乱を大きくしているといった認識だ。これも確かに真実である。

消費への欲望は無制限なのか

 しかし、不況(経済停滞)の根本原因は、むしろ「消費」の不足にある。日本経済全体、あるいは世界経済全体での生産能力に比べて、消費が少なすぎるのだ。この消費不足の問題もずっと以前から指摘されている。

 たいていの場合、「人々はもっと消費を増やしたいが、手元にカネがないから消費を増やせないでいる」との認識が前提とされてきた。だから、政府が直接カネをばらまくような財政政策をおこなって、一時的な所得を増やしてやり、同時に、金融政策をおこなってカネを借りやすくしてやれば、人々は消費を増やす。

 その前提で、不況対策が重ねられてきた。

 しかし不況からは脱出できていない。デフレや雇用不安は深刻化するばかりだ。この結果について、一部の経済学者は「政策の規模がまだまだ小さすぎる」と主張する。

 でも、別の見方もあるはずだ。ばらまき型の財政政策やカネを借りやすくする金融政策には、現代の「消費不足」を解決する力などないという見方である。そのように考える際のポイントは、現代人の「消費への欲望」をどうとらえるかにある。

 正直なところ、経済学者は(・・・本稿の筆者も経済学者のひとりだが)、人間は欲深い生き物だから、消費への欲望はいくらでも無制限に高まっていくものだと考えやすい。国全体、あるいは世界全体の経済を論じるときには、特にそう考えてしまいやすい。