ドイツ
"ドイツ史に残る選挙"を征したメルケル首相の内憂外患
〔PHOTO〕gettyimages

9月22日、注目の総選挙の日にドイツへ戻った。夜、家についてすぐにニュースを見ると、投票所は閉まったばかりだというのに、すでにかなり確実な予想が出ていた。メルケル首相の大勝利だ。

もし、彼女が首相を続投すれば、3期連続。これは戦後最初の首相アデナウアー、そして、東西ドイツ統一の立役者コール首相に次ぐ、3人目の快挙となる。ゆえに、「ドイツ史に残る選挙」とのこと。

しかし、それより何より、今回の選挙がドイツ史に残ると言われているもう一つの理由は、FDP(自民党)が議会から消滅してしまうことだ。

ワンセットのCDU/CSU、全議席を失ったFDP

ドイツの政治にあまり詳しくない人のために少し復習すると、現在のドイツ政権はCDU(キリスト教民主同盟)とCSU(キリスト教社会同盟)、そしてFDP(自民党)の連立となっている。

メルケル首相率いるCDUは、押しも押されもせぬドイツの第一党だが、面白いことにこの政党はバイエルン州にだけは存在しない。その代わり、バイエルン州にはCSUという姉妹政党がある。そして、CDUとCSUは常にワンセットになっている。

ドイツの南、アルプスの麓にあるバイエルンという地方は、非常に個性的で、他とは相容れない特殊な土地柄である。州都はミュンヘン、有名なのはオクトーバーフェストというビール祭り。ハイテク産業が盛んで、景気も良い。教育水準も高く、ドイツで1、2を争う。

ただ、バイエルン州は非常に保守的な土地柄で、州都ミュンヘンの先進性に対して、そのアンバランスは甚だしい。CSUは、そのバイエルンの保守気質の代弁者であり、州内での威力はものすごく、先週は州議会選挙があったばかりだが、CSU一党で絶対的過半数を獲得した。党首はゼーホーファー、見上げるばかりの大男だ。

いずれにしても、CDUといえば、その政治地図の一角には常にCSUが含まれていると思って間違いないが、ややこしいのは、このバイエルン州の雄CSUが、常にCDUと歩調を合わせているかというと、そうでもないことだ。しかし、まあ、それは、今は横に置いておこう。

さて、もう一つの連立与党FDPというのは、1948年に結成された自由主義を標榜する政党だ。旧西ドイツの時代から、保守のCDU/CSUと、あるいは、左派のSPD(社民党)と自由自在に連立してきた。

大昔のアデナウアー政権の一時期と、キーシンガーのCDU/SPDの大連立政権を除けば、ほとんど常に与党として連立政権に参加していた。そういうと、まるで節操が無く、コバンザメのようにも聞こえるが、良い政治家も輩出している。

たとえば、党首ハンス=ディートリッヒ・ゲンシャー。1974年(シュミット政権)から1992年(コール政権)まで、18年間も外相を務めた強者だ。東西ドイツの統一も、彼なくしては違ったものになっていただろうと言われている。また、FDPは、国家元首である大統領も、テオドール・ホイスとヴァルター・シェールと、2人輩出している。いずれにしても、小さいながら、国政で影響力を行使してきた政党ではあった。

前回2009年の総選挙では、このFDPがめきめきと票を伸ばし、CDU/CSUと連立して与党となった。ところが、その後の墜落はドラマチックといってよいものだった。原因は定かではない。人材不足、仲間割れ、間違った政策など、様々な要因が絡み合っていることは間違いない。

その後、対処療法としての党首交代もあったが、不人気は改善されず、支持率の低下は止まらなかった。そうするうちに、2011年にはブレーメン、メクレンブルク=フォアポンメルン、ベルリン、12年にはザーラント、13年にはバイエルンの各州議会選挙で全議席を失った。そして、今回、ついに連邦議会からも退場することになったのである。

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