佐藤優のインテリジェンス・レポート
プーチンは本気でオバマに喧嘩を売った---「プーチンが寄稿した米紙『ニューヨーク・タイムズ』記事は、国際政治の大きな影響を与える」ほか

【はじめに】
9月11日の米紙「ニューヨーク・タイムズ」に掲載されたロシアのプーチン大統領の寄稿を読んで驚きました。プーチンは本気でオバマに喧嘩を売っています。9月19日の「朝日新聞デジタル」は、プーチンの寄稿に関する米国の反応についてこう報じています。
 
<今度は米国で猛反発が起きた。ベイナー下院議長は「侮辱された」、メンデネス上院議員は「吐きたい気分になった」。カーニー大統領報道官も「米国がなぜ特別なのか、ロシアは好対照を示す」とした。
「本当に特別か」は意見が分かれるが、米国内では自国を指して「エクセプショナル」という表現がしばしば使われる。「例外的」という意味もあるが、「抜きんでていて特別」という文脈が多い。
(略)
オバマ氏も就任直後のインタビューで「米国が特別だと信じている」と発言。ところが「他の国もそうだと思う」という趣旨の発言をしたこともあり、共和党からの批判は絶えない。昨年の大統領選で共和党候補になったロムニー前マサチューセッツ州知事は「オバマ氏は米国を普通の国だと思っている」と繰り返し発言。党大会ではマケイン上院議員ら登壇者が次々と「米国がいかに特別か」を強調した。(略)>
 
今後の国際政治に大きな影響を与えるきっかけになるプーチンの寄稿をロシア語のニュアンスを勘案しながら分析してみました。
(略)
また、9月26日に発売される拙著『超訳 小説日米戦争』(K&Kプレス)は、1920年に出され、当時のベストセラーとなった樋口麗陽『小説日米戦争未来期』の翻訳です。国際政治についての優れたシミュレーション小説なので、是非、目を通していただきたいと思います。

分析メモ No.49 「プーチン露大統領の9月11日付米紙『ニューヨーク・タイムズ』への寄稿」

G20でのプーチン氏とオバマ氏

【事実関係】
9月11日付米紙「ニューヨーク・タイムズ」にロシアのプーチン大統領による「シリアの二者択一」と題する寄稿が掲載された。

【コメント】
1.―(1)
プーチンの寄稿は、9月10日に米国のオバマ大統領が表明した、米国を例外視する一国主義的政策を強く牽制することを意図している。

2.―(3)
儀礼的な挨拶を別にすれば、首脳が外国の国民に直接重要な政治的メッセージを送るのは異例のことだ。要するにプーチンはオバマに「あなたや、ケリー国務長官、米国外国間と協議しても埒が明かないので、直接、米国国民に呼びかける」と啖呵を切っている。外交的には非礼な行為である。

3.―(1)
プーチンは、シリアに対する米国の空爆計画について、<ミサイル攻撃が、イランの核問題解決、アラブ・イスラエル紛争の正常化に向けた多面的な努力を破壊し、中東と北アフリカの情勢全体をさらに不安定化する可能性があります。このことが国際法と国際秩序の体制の均衡を崩す危険をはらんでいます。>と述べる。

3.―(2)
この発言を敷衍すると、米国がシリアを空爆した場合の影響として、

 イ.イランは開発を強行する、
 ロ.イスラエル・アラブ間では武力衝突が発生する、
 ハ.エジプトやアルジェリアなどの北アフリカ地域でも内乱が起こる危険がある、

ことを強く示唆し、オバマの外交政策が危険な性格を帯びていることに警鐘を鳴らしている。

4.―(1)
寄稿の末尾でプーチンは、<最後に以下のことを指摘したいと思います。バラック・オバマ米国大統領と私は、ますます信頼のある、実務的で、個人的な関係を構築しつつあります。私はそれを高く評価します。>と述べる。

4.―(2)
「信頼のある、実務的で、個人的な関係を構築しつつあります」と現在進行形で述べているということは、裏返して言えば、まだ十分な信頼関係が構築されていないということだ。

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