「講座: ビジネスに役立つ世界経済」
【第19回】 FOMCの総括と混迷するFRB次期議長人事

〔PHOTO〕gettyimages

9月17、18日のFOMCでは、「緩和策縮小見送り」が決定され、内外のマーケットにサプライズを起こしたことは記憶に新しい。だが、本講座でも数回指摘したように、米国(特に経済学界)で、戦前の経済史に多少なりとも見識のある人にとっては、「1937年大不況」の教訓から、このタイミングでの緩和縮小策(すなわち、「出口政策」への入り口)は時期尚早である点は自明であったはずである。FOMCの決定は至極当然であるといえる。

それよりも問題なのは、実務サイドの民間エコノミストの圧倒的大多数が、このような歴史的教訓にあまりにも無知であるということだろう。言い換えれば、彼らは自らのキャリアにおいて未体験であった「ゼロ金利・量的緩和」という金融政策についてあまりにも理解に乏しいことを露呈してしまった。今後も量的緩和を理解できないエコノミストが形成するコンセンサスは無意味に等しいだろう。

そのほとんどが有名大学でPh.Dを取得し、日本と比べ、圧倒的に知的レベルの高い米国民間エコノミストとはいえ、量的緩和に無理解のまま、目先の状況に右往左往する状況で予想が当たるはずはない。一方、バーナンキ議長をはじめとしたFRB、特にFOMCの主要メンバー(彼らの多くはアカデミズムでも極めて高名な経済学者である者が多い)にこの歴史的教訓が共有されていたことは「不幸中の幸い」であったかもしれない。

「市場のコンセンサス」は当てにならない

ところで、今回のFOMC後の記者会見でバーナンキ議長は、出口政策(Tapering)は、経済指標の改善に冷静にコミットしていく方針をあらためて明確にした。さらに、今回、緩和縮小を見送った理由について、「我々が目標としてきた6.5%の完全失業率には遠く及ばない」経済状況を指摘しており、緩和縮小は当面見送られる可能性が高いと考える。

その後、ハト派であるはずのブラードセントルイス連銀総裁が、10月のFOMCで緩和縮小が決定されることもありうる旨の発言をしたことが報道され、米国株式市場を再び混乱させているが、これは、市場参加者もそもそも出来もしない政策の裏読みをするのではなく、冷静に経済指標の動向を分析して金融政策の予想を行うようにという、市場参加者に対する「戒め」と捉えたほうがよいのではないか。

いずれにせよ、今回の件で、「市場のコンセンサス」なるものが如何に当てにならないものかが明らかになった。「専門家の声」だからといってこれを鵜呑みにしてはならないということを教訓とする必要があるだろう。

筆者は以前からバーナンキ議長の任期中に緩和縮小が実施されることはないと考えてきた。さらに、歴史的な教訓を踏まえた「べき論(金融政策はこのように実施すべき)」では、緩和縮小は、(1)実質GDP成長率が3%程度の安定的な成長軌道に乗ったことが確認されてから(直近の4-6月期実質GDP成長率は季調済前期比年率換算で+2.5%)、及び、(2)「信用乗数(世の中に流通しているお金の総量であるマネーストックをFRBが供給してきたマネタリーベースで割ったもの、金融機関による信用創造機能がどの程度活発化しているかを示す指標)」が上昇トレンドに戻ったことが確認されてから(直近は依然として低下トレンドで推移している)、であると考えている。

この条件を満たすのは早くても2014年終盤くらいではないかと考える(2015年以降にずれ込んでもおかしくないと考える)。

この筆者が主張する「べき論」は過去(世界大恐慌直後)の出口政策失敗の教訓を踏まえてのものだから、大恐慌研究の大家であるバーナンキ議長が続投すれば、出口政策は市場の想定をはるかに超える先送りの可能性があるだろう。だが、現状、バーナンキ議長が再任される可能性は極めて低いようだ。

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