古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジン動画版Vol.008
「力に力で対抗するよりも、『平和国家、日本』を国際世論で盛り上げ、中国に圧力をかけるほうが得策だ」

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日米安保と集団的自衛権

Gbiz電書(以下Gbiz): 安倍政権、もう1つの課題は外交・安全保障ですね。ちょうど今年の8月15日にも、アジアの中での問題ということでは靖国参拝の問題がありました。安倍さんは公式参拝を見送ってということになったんですけれども、これについて古賀さんはどうご覧になりましたか?

古賀茂明(以下古賀): 靖国参拝を見送ったというのは、これは当然の判断だと思うんですね。安倍さんは周りの国にばかり行っていて、一番肝心要の中国や韓国と話ができないという、非常に困った状況になっている。そういったことを打開していくためにも、あまり無用に相手を怒らせたり困らせたりする必要はない。

そういう意味で、あれは賢明な判断だったと思うんですけれども、安倍さんは中国、韓国のことも当然考えたと思いますが、もう1つ、アメリカのことも考えたと思うんです。

いままでは、アメリカが「靖国参拝をやめろ」ということは基本的にはなかったわけですよ。けれども、これはどういう形でどういうふうに伝えられているかはわからないんですが、もういま、アメリカから日本に対するメッセージというのは、「とにかく中国とケンカをするな」ということです。

多少の小競り合いはしょうがないにしても、深刻な事態というのは絶対に起こすなというのが、アメリカ側の日本に対するメッセージなんです。これはオバマさんなんかのはっきりしたメッセージだと思うんですね。

安倍さんたちの認識とアメリカ側の認識がかなりずれてきているんじゃないかという気がします。安倍政権というのは、もちろん、日米安保条約基軸で、中国に対しては甘い顔をしちゃいけない、自分の領土は自分で守るんだ、血を流してでも守るんだ、という姿勢を見せなきゃいけないと思っている。そういう姿勢を見せることによってアメリカも、じゃあ、日本のことをちゃんと守ってあげましょうとなると。

一応、日本が攻められたら防衛してくれるということにはなっているけれども、自分で戦わないやつを本気で守ってくれるはずがないじゃないかと。だから自分たちが戦う姿勢をちゃんと見せることが大事なんだと。こういう発想がどうもあるんですね。

いま進めているのは、国防費をどんどん削っていくようなことは止めて、むしろ増やしていくということです。海上保安庁だけではなく、自衛隊の軍備を増強するというようなことをやって、しっかり戦える国になるということです。

軍備の増強だけではなくて、憲法も改正して、自衛隊という名前を「国防軍」に変えますというようなことを言っているし、それから、これは憲法を改正しなくてもできると言っているんですけれども、集団的自衛権の行使を認める方向に舵を切ろうとしていますよね。

アメリカがもし誰かに攻められたときに、日本は、「いやあ、うちのお母さんに絶対ケンカしちゃダメだと言われているから帰ります」みたいなことを言っていたら、そんなやつは、いざ、今度は自分がいじめられたときに「助けて」と泣きついたって、誰が助けてくれるもんかと。こういう非常にわかりやすい理屈を作って言っているんですけれども、要するに、日米で見ると、アメリカは日本を守るために日米安保条約を守っているわけではないんですよ。アメリカで世論調査をやったって、9割以上は、これはアメリカのためだとなる。そういうふうにはっきり言っているんです。

日本人はなんとなく、「アメリカに守ってもらっている」と考える。世論調査をやっても6割とか7割がそう思っているんですけれども、実はそうじゃなくて、アメリカはアメリカのための条約だと思っているんです。

日米安保条約では日本が攻撃されたらアメリカが守るという義務がアメリカにはあるわけですね。ところが、日本が集団的自衛権を行使しますなんていう義務はまったくない。アメリカが攻められたから日本がアメリカと一緒になって戦いますなんていう義務は一切負っていないんですよ。その代わりに、沖縄をはじめとした基地をちゃんと提供しますよとか、思いやり予算みたいなものも含めて、いろんな費用を負担しますよというようなことを約束して、義務を負っているんです。

お互いに義務を負った、ギブ・アンド・テイクの条約なんですね。ですから、もともとどっちが得でも損でもないという関係のはずなんですよ。それなのに、なぜか日本は一方的に負い目を感じていて、アメリカが攻められたときに一緒に戦わないというのは申し訳ないといって、集団的自衛権の行使を認めるんです。「アメリカさん、それでよろしいですよね」みたいなことをやっているんですが、これは大いなる勘違いですよ。何かこう、一方的に守ってもらっているなんて、そんなお人好しな国があるわけないんですから。アメリカはアメリカで、これで十分に得をしていると思っているわけですから。

そうだとすると、仮に集団的自衛権の行使をしてあげますよということになったときに、アメリカがどれだけ恩を感じるのかということですよね。恩を感じるんだったら、逆に何をしてくれるんですかと。たとえば日米地位協定の抜本的見直しに応じますとか、それぐらいのことを取ってもいいと思いますよ。集団的自衛権行使を認めるんだったら。でも、日本にそういう発想は全然なくて、ただ一方的に譲歩しますということなんですけれども・・・。

これはアメリカとの交渉でどうこうというんじゃなくて、結局、日本の中に安倍さんみたいな人たちが、いろんな状況を考えて、いつでも戦争をできるという、戦争をできる国にしたいという思いがあるから、そういうことを言い出しているんだろうなと思うんですね。

憲法改正で自衛隊を国防軍にしますというのも、憲法改正草案ですね、自民党の、あれを見ると、「国防軍を保持する」と書いてある。いまの憲法9条では基本的には軍隊は持てないんですよ。持てないんだけれども、自衛隊というのができちゃって、すでに存在するから、それにいろんな屁理屈をつけて、「いいんです」ということにしているんですね。

それは相当苦しい論理だから、じゃあ、いまの自衛隊がもっと海外で積極的に活動できるようにしましょうという話になってくると、かなり制約がかかるわけですよ。なぜかといったら、元々日本には軍隊なんかないはずだからです。

ところが、いま、自民党は国防軍に変えますよと言っている。「国防軍を保持する」と。だって、いまあるんだから、そう書いたって別に何も変わらないじゃんと、こういうふうに言っているわけですけれども、「保持する」と書く意味は条文上ものすごく大きくて、逆に、「憲法では軍隊を持つということを決められている」というふうにとれるんですね。ですから、将来たとえば夢のようなことが起きて、軍隊なんてみんなで無くしましょうとなったときにも、逆に「いや、それは憲法違反だ」となるんですよ。

Gbiz: 逆に、そうなるわけですね。