メディア・マスコミ
小川和也 × 堀潤 【中編】
徹底した自前主義が、イノベーションを阻害してきた! マスメディアは情報の民主化時代とどう向き合うべきか?

[左]小川和也さん(グランドデザイン&カンパニーCEO)、[右]堀潤さん(ジャーナリスト)

【前編】はこちらをご覧ください。

オープンジャーナリズムが、10年以内にスタンダードになる

小川: テレビ局の中側からオープンジャーナリズムみたいなものを体現しようと思うと、やっぱりこれは難しいものですか?

堀: 僕の動きとは関係なく、数年後にはたぶん完成されていると思うんです。

小川: 自然と完成されますか。

堀: パブリックアクセスのように、一般の人が参加する流れになることは、長期的な目で見ると、近いうちに日本にも来ると思います。

小川: 自明の理だと?

堀: そうだと思います。僕はちょっとでも早くそこに行きたいので、ワーワー言っているんです。例えば、最近『アルジャジーラ』は、非常に勢力を伸ばしていて、アメリカの『Current TV』っていう多くの視聴者を抱えているテレビ局を買収しました。

小川: 結構話題になっていましたよね。

堀: そして、アメリカ本土での地上波放送を始めました。そんな彼らが今、一番力を入れているが、『アルジャジーラ・インタラクティブ』っていうサイト。いわゆるビッグデータを解析して、インフォグラフィックスにして提示することをどんどんやっているんですね。

 シリアの問題だと、いまどこにどれくらいのアメリカ軍が展開しているのかをネット上のメディア、人々が発言しているものを分析し、リアルタイムでマップを作って、提示したりするんです。

 イスラエルとパレスチナだと、たとえばロケット弾がここから飛んできて、ここに着弾したというのを、それぞれツイッターとかで現場から「今飛んできた」とか発言しているのを分析していくと、発射地点と着弾したところが全部分かる。それを地図上に落とし込んでいく。さらにそれをクリックすると現場にいる人のツイートが出てきたり、場合によってはスカイプで結ばれたりする。

今は、瞬時にネットで現場の様子をたくさんの人に伝えることができる時代です。1人の記者が現場に行って戦場ジャーナリストとして伝えるだけでは追いつかないんですよね。それならば、一般の人たちが発信しているものを、こちら側で整理すればいいじゃないかと。

 そうなると質が悪かったら困るから、一般からの発信を底上げしなきゃいけない。当然、ニュースのパーツは、1人のジャーナリストが作るんじゃなくて、一般の人たちから上がってくる情報の集合知みたいなことになっていく。今まで日本では、あまりやられてこなかったですけれど、10年以内くらいにはスタンダードになってくるんでしょう。

小川: これって、2つの考え方として、情報の発信源に一般の方がなっていくっていうことと、もう1つは、それによってみんなで考えようっていう集合知の部分がありますよね。

課題解決性については、人を巻き込むことによってメディアの一方的な情報発信だけじゃなくて、それに対して実はこんなアイデアがあるんじゃないかとか、こんな過去の経験則がありますってことが、ネット上から集合知として集まってきやすいってことですよね。

堀: そうですね。例えば原発で汚染水の問題がクローズアップされています。

 アメリカもしくはヨーロッパで同様の事故が起きていたら、あの情報が外に出てくるのって、もっと早かっただろうなと思うんです。というのは、インターネット上では、2011年4月に1回目の漏れが確認されて対策を打っている頃から、「いやいや、もっと漏れていますよ」とみんな言っていたわけです。科学者たちが独自に発信したりとか、外国メディアの報道とか。でも日本のメインストリームのメディアでは、ほとんど無視だったんですよ。

それは、インターネット上の情報がまだまだ玉石混淆で、「そんな情報、扱えるか!」みたいな感じで放っておいたこと。そして、社会全体として、例えば東京電力や政府にしても「インターネットでウジウジ言っているようですけれど、あれはネットですから」みたいな。

「まあ、どうにかなるでしょう」みたいに、テレビ、新聞の信頼度が高く、相対的にインターネットの情報の信用度が低いという構図の中にあった。そのため、せっかく現場から「本当はこうなっているんですよ」って声を上げている人たちが結構いたんだけれども、それがなかなか上がってこなかった。

一方で、諸外国に行くと、CNNとかBBCとかは、インターネット上からも集まってくる一般の人たちの情報に、それなりの価値をつけて、放送でどんどん還元していくというカルチャーができあがりつつある。

例えば、「政府が言っていない、電力会社が言っていないけれど、私たちのCNNのサイトには、一般からこんな情報がたくさん出ているんだ。集合して分析してみると、こんなことになっているけど、どう思う?」みたいなことをプレゼンするわけです。

実際にCNNは、2008年から『CNN iReport』というサイトを設けて、そこにガンガン一般の人たちから情報を集めています。BBCもデジタル戦略にすごく力を入れているじゃないですか。だから、彼らのブログサイトみたいなところには、玉石混淆の一次情報が、がんがん集まってきて、どんどん並んでいくみたいな。

CNNと言えば、アメリカを代表するトップメディアじゃないですか。BBCは、イギリスを代表する公共放送ですよね。ところが、日本のメディアで、一般の人たちから有象無象のものも含めた情報を抱えて、分析するところまでちゃんと調理できている放送局があるかっていうと、ないじゃないですか。

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