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弱体化した東京地検特捜部が「徳洲会」を公職選挙法違反で強制捜査した理由

「巨悪は眠らせない!」

伊藤栄樹検事総長(1985~88)が、こう啖呵を切った頃、検察には、「政官財の監視役」としての迫力がみなぎっていた。

ターゲットは、大物政治家であり、金融機関の長であり、利権を操るフィクサーだった。実際、地検特捜部は、リクルート、国際航業、イトマン、東京佐川急便、金丸脱税、ゼネコン、2信組、住専、一勧・旧4大証券、大蔵・日銀事件などを次々に仕上げて、時の権力者の心胆を寒からしめた。

しかし、証拠偽造の大阪地検事件、意地と執念で大物政治家を狙い失敗した小沢一郎事件で、地検特捜部は変質を迫られた。

「巨悪を狙う」という使命感から脱却した"節目"の事件

その変化を証明したのが、国内最大の医療法人「徳洲会」で、組織ぐるみの選挙違反があったとして、17日、強制捜査をかけた公職選挙法違反事件である。

公選法違反は犯罪だ。

だが、ポスター貼り、事前運動、選挙事務所や後援会の運営などのそれぞれに細かい規定があり、従来、警察が悪質部分をノルマ的に摘発していた。

今回、徳洲会で問題になったのは、徳田虎雄理事長の次男である毅代議士の昨年末の総選挙の際、徳洲会グループの病院から300名以上が派遣されて選挙活動を行い、旅費や宿泊費の他、日当も受け取っていたこと。

運動員買収である。告発を受けた東京地検特捜部が受理して捜査しても問題でなく、むしろ、特捜部が「巨悪を狙う」という使命感から脱却、間違いのない違法を、確実に摘発する捜査機関に変質した"節目"の事件と捉えるべきだろう。

事件の背景に、徳田虎雄理事長が、10年前に筋委縮性側索硬化症を患い、体の自由が利かなくなって以降、急速に力を増した能宗克行専務理事と、夫人と2男5女の徳田ファミリーとの間の確執があることを、私はこのコラムで、「『徳洲会=自由連合』スキャンダルの背後にある『徳田ファミリーVSすべてを知る男』の血みどろの戦い」(13年2月14日配信)と、題して伝えた。

昨年9月、専務理事の職を解かれ、追い打ちをかけるように懲罰委員会で責任を追及しようとした徳田ファミリーに対し、能宗氏は、今年1月、83ページもの「回答書」を作成、徳田虎雄・毅父子の政治活動の問題点、徳田ファミリーの医療法人私物化などを暴露した。毅代議士が、19歳の未成年女性を「泥酔姦淫した」という週刊誌記事の"火元"も「回答書」であり、毅代議士は国交省政務官を辞任している。

実は、能宗氏は、我が身に火の粉が降りかかることを承知で、検察に駆け込み、特捜部の事情聴取に応じていた。告発は、自由連合及び毅代議士の政治資金規正法違反である。これに対して徳田ファミリーも、能宗氏の背任横領を示す数々の証拠を集め、大物ヤメ検弁護士に相談、告発の準備を進めていた。

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