【厚生労働 その2】 年金制度改革---抜本的な問題解決から逃げるな!

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読者の皆さんは、サザエさんに出てくる磯野波平さんの年齢をご存知だろうか。

サザエさんの時代は、高度成長期。波平さんやマスオさんは正社員として働きに出て、お母さんは専業主婦だ。磯野家も3人姉弟妹であるように、人口ピラミッドも三角形だった。そして、肝心の波平さんの年齢は、なんと、54歳だ。あの時代の54歳は、波平さんのように年老いていて、もうすぐ定年を向かえ、60歳から年金生活に入るという時代だったのだ。

しかし、今の日本の54歳は、もっと若々しい。高齢者と言ってよいか分からないが、いずれにしても、より長く社会で活躍し、社会を支えることが可能になっているはずだ。

さて、本題に入ろう。今の年金制度は、60歳には定年になる高度成長期に作られたものだ。しかし、時代は変わり、今や日本の高齢者は、もっと社会に貢献することが可能になっている。社会の変化は、当然ながらそれだけではない。低成長、少子高齢化、人口減少社会、非正規雇用の増加、莫大な財政赤字。社会は、大きく変化している。

私たちの社会保障改革の基本原則は、厚生労働編その1で示したように、「医療保険、介護保険、年金という保険制度は保険の範囲内で持続できる制度を目指す」ということだ。

年金に関しては、既に基礎年金に、税金の半分が投入されている。社会が構造変化しているのに、昔の仕組みをそのまま維持しようとするところに無理がある。変化に対応して、年金の仕組みも変えることで、持続可能な制度にすることができる。

これまで年金改革に関して、様々な議論がなされてきたが、「改革」といっても、シンプルに考えれば、年金財政を持続可能にするために、

①なるべく多くの保険料を取り
②なるべく少ない年金を支払う

この2つしかないのだ。

実際、年金政策の国際的な議論をみてみると、年金制度の持続可能性という要請は、先進諸国における共通の課題となっており、年金財政問題の解決策は、

「平均年金月額の引下げ」
「支給開始年齢の引上げ」
「保険料の引上げ」
「国民総生産の増大政策」

の4つだけでしかなく、これらのアプローチが含まれていない年金財政改善方策はいずれも幻想にすぎないといった指摘もなされている(IMF「世界危機後のアジアにおける財政的に持続可能かつ公平な年金制度の設計(2013年1月))。

つまり、年金財政の健全化には、国民総生産の増大が有効、あるいは長期的には、人口増を図る政策をとることは当然だが、年金制度に関しては、結局はシンプルに

①なるべく多くの保険料を取り
②なるべく少ない年金を支払う

制度を如何に作るかということが、年金財政の持続可能性という観点で必要だということだ。

年金改革に関しては、税方式か保険料方式か、賦課方式か積立方式か、といった議論がなされてきたが、基本的に現役世代から税にせよ保険料にせよ、資金を徴収し、高齢世代に所得移転するという仕組みに変わりはない。

したがって、

①なるべく多くの保険料を取り
②なるべく少ない年金を支払う

という視点から、年金制度の創設時からの社会構造の変化に対応した「改革」を示したい。

1. 支給開始年齢を75歳に引き上げよ!

テレビの設定では、54歳の波平さんの姿は、現代の日本で言えば、70歳くらいの男性に見えるのではないか。そうすると、年金支給開始は、75歳ということになる。この推察は大雑把すぎるが、実際に、日本は高齢化し、平均寿命も伸びていることは周知だ。平均寿命は、1965年に、男性67.74歳、女性72.92歳だったものが、直近の2012年には、男性79.94歳、女性86.41歳と12~14年も伸びている。

平均寿命の伸び、年金保険の赤字体制、少子高齢化の進展を考えると、年金の支給開始年齢を引き上げることは当然必要である。基礎年金の支給は、先ずは70歳。そして、ゆくゆくは75歳からとすべきだ。

そのためには、高齢者の就労を促進し、生涯現役で働くことのできる社会を作る必要があろう。また、働くことができない高齢者に対しては生活保護(基礎年金と同額程度支給。詳細は、次の「行動」で詳述予定)によるセーフティーネットが必要だ。

財務省の試算では、仮に基礎年金の支給開始年齢を1歳引き上げると、毎年約5,000億円の公費負担削減効果が見込まれる。逆に引き上げないと、毎年5,000億円近くの年金負担が増えていくことになる。

10歳引き上げれば毎年5兆円削減となり、年金財政へのインパクトは大きい。政府は、高齢者就労の促進に本気で取り組み、基礎年金支給開始年齢の引き上げを行うべきだ。

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