【厚生労働 その1】 医療保険---高齢者を含め自己負担を一律3割にせよ!
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日本には、世界に誇るべき国民皆保険、国民皆年金、介護保険といった社会保障制度がある。これは確かだ。すべての国民が、保険証1枚で低価格の医療サービスを受けることができ、世界でも最長の長寿社会を公的年金と介護保険が支え、生活保護というセーフティーネットも備えられている。

しかし、今の医療、年金といった社会保障制度は、1960年代から1970年代の高度成長期に完成されたものだ。高い経済成長と正規男性雇用中心の低失業社会、三角形の人口ピラミッド。そういった時代に出来上がった制度だ。しかし、今や日本社会は変化し、低成長、少子高齢化、人口減少社会、非正規雇用の増加、莫大な財政赤字といった社会変化のもとで、社会保障費は経済成長を上回るスピードで増大している。

そういった社会構造の変化の中でも、1970年代の国民皆福祉の発想を変えないまま高齢化社会に対応するため、2000年には介護保険制度をスタートさせ、昨年には消費増税を決めた。未だに国民皆福祉の水準を維持しようとしているのが今の政策だ。

しかし、低成長、人口減少社会において、これまでのレベルの福祉を維持していくことは、「未来の世代からの搾取」をしていることに過ぎない。私たちはそろそろ現実を直視して、現状に合った福祉に切り替える改革をする必要があろう。

政府は、社会保障制度改革国民会議の報告を受けて、8月21日に社会保障プログラム法案の骨子を閣議決定したが、現状の福祉水準の維持を前提とした小粒な抑制策のみで、基本的な発想の転換に基づく改革はない。

必要なのは、現実的で持続可能な社会保障制度に変えることである。その原則は以下の2つだ。

(1)医療保険、介護保険、年金という保険制度は、保険の範囲内で持続できる制度を目指す。

(2)セーフティーネットである生活保護制度は税金で支えるが、給付の範囲や期間は最低限に絞る。

この原則に従って、各制度の改革を進める必要がある。まずは、医療保険制度から論じていこう。

1. 自己負担を一律3割に!

2013年の国民医療費は、41.8兆円で、内訳は保険料が約20兆円、患者の自己負担が約5兆円、公費が約16兆円となっている。現在でも国民医療費は巨額だが、今後高齢化社会の進展に伴って、厚労省の推計では、これが2025年には54兆円にまで増加する。

現状では医療費に公費が多く投入されているが、理想的にはこれを保険料だけで賄う医療保険制度が目指されるべきだ。そのためには、利用者が医療を過度に使わない制度に改革するしかない。

簡単なことだ。まず、利用者負担を年齢に関わらず一律3割にすればよい。国民医療費を年齢別にみると、65歳以上の高齢者の割合が55%と半分以上になっており、額にしておよそ23兆円だ。しかも、70歳以上の自己負担比率は10%しかないので、公費投入の7、8割は高齢者医療によるものと試算できる。

もちろん、加齢は病気になるリスクの最大の要因であるから、しかたない部分もあるが、この急激なこう配をゆるやかにすることは可能だ。それには、高齢者の自己負担をまずは、2割、そしてゆくゆくは現役世代と同じ3割に設定することで、シンプルに医療への過度な 依存を抑制するディスインセンティブを制度に組み入れることができる。

今の高齢者医療では、現役時に十分な健康へのケアをしてこなかった高齢者が、リタイア後に、糖尿病や高血圧、骨粗鬆症などの生活習慣病の治療によって、国民医療費を押し上げている構造がある。つまり、自らの健康をケアしてこなかった高齢者のために、膨大な公費が投入されていることになっている。

これに関しては、4でも後述するが、予防・健康への投資を進め、患者の数自体を減らすことが必要だろう。それに加えて、終末医療に関しても、病院で延々と入院させられて終末を迎えるのではなく、在宅での終末医療への転換を進めるべきだ。

しかし、現状の医療は、高齢者の自己負担が低く設定されていることによって、有限の医療リソースが高齢者医療に集中し、結果として医療費の増大につながる構造になっている。これを変えるには、自己負担を年齢に限らず一律3割にすることが最も分かりやすい。そもそもなぜ高齢者だけ負担を減らす必要があったのか? 高齢者が少なかった時代ならばいざ知らず、今や少子高齢社会だ。むしろ子供に手厚くすべきであろう。

現状では、医療にかかった場合の患者の自己負担は、70歳以下が3割、70歳~74歳が法律上2割のところ、毎年度約2,000億円の予算措置を行って、1割負担に凍結、75歳以上が1割となっている。まず、最初のステップとして、70~74歳の自己負担を早急に法律上の2割に戻し、その次の段階として自己負担比率一律3割を導入すべきだ。

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