特集 公民連携
PPP 国・自治体+民間のシナジー効果
コスト削減から経済活性化へ

 国や自治体の厳しい財政状況が続く中で、公共施設をいかに維持し必要な更新をしていくかが大きな問題になっている。すでに導入されている民間資金を活用するPFI(Public Finance Initiative)に加えて、官(公)と民、市民がそれぞれの役割分担を持ちながら結びつき、地域社会や経済を活性化していくPPP(Public Private Partnership)の考え方が広まっている。安倍晋三内閣は新たな成長戦略にPPP/PFIの推進が重要と位置付けており、政府は民間資金活用の抜本改革に向けたアクションプランを発表。自治体と民間のさまざまな形の公民連携事業も誕生している。インフラ整備が税財源だけに頼ることができない時代の新たな知恵が試されている。

 公共施設の整備や維持管理、公共サービスの提供などの多くは国や自治体がなど担い、その財源は税収や公債発行で賄い、国民の負担になっている。90年以降のバブル経済で、税収が伸び悩む一方で、歴代政権の度重なる公共事業投資を含む景気対策で国と自治体の財政は悪化の一途をたどった。高度成長期に急増されたインフラの老朽化に伴い、ますます財政需要が増えているのが現状だ。

 官(国)や公(自治体など)の財源だけに頼らず、民間資金を活用するのがPFIで、PPPの代表的な手法だ。1999年にPFI法が議員立法で制定され法的な仕組みが出来上がった。その目的は「民間の資金、経営能力、技術能力を活用して公共施設等の整備等を促進」することで「効率的かつ効果的に社会資本を整備するとともに、国民に低廉かつ良好なサービスを提供」することだ。

 PFIは英国で92年に道路建設などに取り入れられたのが始まりとされ、その手法を参考にして導入された。対象施設は、道路・鉄道・港湾・空港・河川・公園などの公共施設、庁舎・宿舎などの公用施設、教育文化・廃棄物処理・医療・社会福祉などの公益的施設、情報通信施設など。さらに11年改正で船舶や航空機、人工衛星などに拡張された。

 それまでは行政側の債務負担は5年間に限られていたが、30年間の延べ払いが可能になったことで、国や自治体が各年度の予算が少なくてすむという財政上のメリットがある。民間側の建設会社や金融機関などは長期的な安定収入が見込め、官民双方に利益が期待される。

PFI事業、累計で4兆円超

 内閣府の調べによると、制度が始まってから12年度末までの13年間のPFI事業の件数と事業費の累計は、418件、4兆1199億円だ。PFI導入によって財政負担をどのくらい縮減できたかを示すVFM(バリュー・フォー・マネー)は7826億円に上っている。

 PFI事業の公共施設の分野別でみると、文教施設などの「教育と文化」が138件で最も多く、医療・廃棄物処理施設などの「健康と環境」75件、「庁舎と宿舎」56件、道路や下水道施設、公園などの「まちづくり」50件、その他の複合施設が46件、などとなっている。

 事業主体は全体の4分の3にあたる314件が地方に対し、国は66件にとどまっている。「教育と文化」「健康と環境」「まちづくり」などの施設や事業は圧倒的に地方が担っていることを示している。国の事業は7割近くの45件が事務庁舎や公務員宿舎だった。

 09年からの民主党政権は、公共事業は原則的にPFI方式を導入することを目指したが、思うようには伸びず、累計4兆円超の実績は、国と地方全体の公共投資全体の中ではまだわずかだ。また、事業件数の4分の3は、建設費と管理費を税財源からの「延べ払い方式」であることから、年度単位ではコスト縮減になってはいても、民間の資金とノウハウを活用して効率的かつ効果的な社会資本整備をするという法の目的を達成していない、という批判があった。

 このため、公共の管理から民間事業者による経営に転換して新たな価値を生み出そうと、民主党の野田佳彦内閣時の11年の法改正で、「公共施設等運営権方式」(コンセッション方式)を取り入れられた。

 安倍内閣は、新たな成長戦略としていっそうの規制改革による民間活力を経済再生の起爆剤にすることを打ち上げた。その一環として今年6月、「PPP/PFIの抜本改革に向けたアクションプラン」が発表された。

 アクションプランでは「できるだけ税財源に頼ることなく、かつ、民間にとっても魅力的な事業を推進」し、官(公)民連携のよる「シナジー効果」を高めることを目指す、としている。インフラの老朽化への対応が喫緊の課題になっている中で、民間資金とノウハウの活用を通して「新しく造る」から「賢く使う」に重点を移すことを掲げている。

 具体的な目標として、PPP/PFI事業を22年までの10年間に12兆円を挙げた。このうち、施設の運営権を民間事業者に対価を得る「コンセッション方式」で2~3兆円目指す。空港や上下水道、道路などを想定している。このほか、公共施設に事業施設を併設する方式で3~4兆円▽公的不動産を民間のアイデアで有効活用するPPPの好事例を増やすことで2兆円▽そのほか複数施設の改修や維持管理をまとめて包括的に契約するなどで3兆円――を目指す。

 また、先の通常国会でPFI法が改正され、PPPによるインフラファンド機能を持つ株式会社の「民間資金等活用事業推進機構」の設立が決まり、10月上旬に発足する予定だ。独立採算型のPFI事業に金融支援をする。国の資金を呼び水に民間投資を喚起させて事業を円滑に進められるようにし、結果として行政の財政負担に縮減と民間のビジネスチャンスを増やすことを目指す。

 官民が共同出資し、政府は今年度予算で100億円を出資する。機構の業務は15年間をめどに終えるとしている。政府は機構の社長に、民間資金等活用事業推進委員長の渡文明経団連副会長(JXホールディング相談役)を内定している。

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 これまでのPFI事業では公的財源に依存した事業が主流であったが、自治体の財政状況が逼迫する中で新しいスタイルのPPPの取り組みが求められている。一般財団法人「地方自治体公民連携研究財団」の協力で、全国で実践されている先進的な事例を三つ取り上げて、そのスキームや成果を紹介する。(1)行政と民間との役割分担、リスクとリターンの設計が明確になされていること(2)民間の収益事業の導入・活用が図られているいること(3)持続的な地域経済への波及効果があること――が3事例に共通する特徴となっている。

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