雑誌
特別レポート 大阪国税局だけじゃない国税OBが取ってくる「脱税」情報

 現職調査官時代に培った人脈やノウハウを使って、企業に脱税を指南する国税OBたち。真面目に税金を納めている一般市民を嘲笑うかのように、私腹を肥やす彼らの驚くべき実態をレポートする。

国税は何でも知っている

「すごいワルだが、仕事はできる—」

 それが細名高司(61歳)の、国税調査官時代の評判だった。

 8月28日、大阪国税局の上席国税調査官・平良辰夫が逮捕された。現在の容疑は脱税に協力した法人税法違反だが、捜査する大阪地検特捜部の狙いは別のところにある。それは、別件ですでに逮捕、起訴されていた国税OBの細名と現職の平良の「癒着」である。

 全国紙社会部記者が解説する。

「細名は今年6月に法人税法と所得税法違反の容疑で逮捕、起訴されました。顧問先の法人7社と1個人事業主に対し、計20回にわたって所得を低く申告させ、法人税と所得税約8600万円を不正に免れさせていたんです。それに加え、'09~'11年の間に、実質的な経営者を務める税理士法人『ナイスアシスト』の売り上げを仮装し、法人税約4000万円を脱税していた」

 平良が細名に国税の内部情報を横流ししていたことは、その一連の捜査の過程で発覚した。

「細名の顧問先の一つである大阪・ミナミのホストクラブの税務調査情報をまとめた内部資料が、家宅捜索をした細名の関係先から見つかったんです。そこから、細名の現職時代に東大阪税務署で先輩・後輩の間柄にあった平良の名前が上がり、逮捕へとつながりました」(前出の記者)

「マルサ(国税局査察部)の情報は取られへんけど、リョウチョウなら取れる」

 細名は以前から、顧問先の企業経営者にこう吹聴していたという。今回受け取っていたのは、その言葉通り、国税局資料調査課、通称「リョウチョウ(料調)」の資料だったと見られる。

 リョウチョウは、査察事案とまではいかないが、脱税の疑いが強いものに調査を行う、マルサへの登竜門とされる部署だ。

 では細名が入手したリョウチョウの資料とは何か。かつて、細名と机を並べて仕事をしていた、ある大阪国税OBが言う。

「複数見つかったと聞いていますが、ひとつは『税歴表』でしょう。国税が独自に作成した『税歴表』には、経営者が買った外車だったり、行きつけのクラブや愛人の有無といった生のデータが記載されています。さらに、『審理図』も渡されていた可能性が高い。これはグループ会社やダミー会社などを使った企業の不明瞭なカネの流れを記載した図解資料で、作成した調査官の能力が高いほど、より精密なものとなる。細名はそれらの内部情報が取れることを口説き文句に相手を信用させ、顧客を獲得していたようです」

 驚くべきは、細名が「脱税指南書」とも言えるこれらの内部資料をいとも簡単に入手できたことだ。

「たとえかつて先輩後輩の関係にあって、現在も親交があったとしても、現職がOBへ内部資料を流すなど滅多にありません。バレれば、クビは免れませんからね。それでも渡していたということは、現職にとって細名がよっぽど頭の上がらない存在だったということでしょう。カネをつまれたか、弱みを握られ脅されていたか。いずれにせよ、細名という男が、相当な『やり手』だということがうかがえます」(国税担当記者)

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら