国際・外交 中国
G20で浮き彫りになった「習近平外交の限界」---「いまそこにあるシリア危機」の前に神通力を失う「現代版毛沢東」
開催国ロシアのプーチン大統領[右]と習近平国家主席[左] 〔PHOTO〕gettyimages

9月5日、6日と、ロシアのサンクトペテルブルクで開かれたG20サミット。そこには、初参加した習近平・中国国家主席の姿があったが、結論から言えば、まったく生彩を欠いた「G20デビュー」となった。

G20というのは、2008年秋に起こったアメリカ発の金融危機を受けて、世界中でこの問題に対処すべく、世界20ヵ国のトップがワシントンに集まって始めたものだ。当時、胡錦濤主席は、「4兆元(当時のレートで約58兆円)の緊急財政支出」を発表し、世界を驚かせた。その後、中国が牽引役となって、世界経済が回復に向かったのは、周知の通りである。

アメリカの金融不安とユーロの債務危機を尻目に、高度経済成長を続ける中国---世界は一気に、「G2時代」(米中が主導する時代)に突入したという見方も広がった。実際、G20が開かれるたびに、中国は存在感を見せつけたものだ。ヒマそうな日本の首相と較べて、胡錦濤主席が分刻みの首脳会談を行う姿が目撃された。

加えて中国は、G20サミットに合わせて、BRICS首脳会談を創設した。これは、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5ヵ国で構成している主要新興国会議だ。G7(先進国サミット)に対抗すべく、2009年に発足し、毎年持ち回りで首脳会談を開いている。世界はまさに、アメリカが牽引する先進国と、中国が牽引する新興国の「G2時代」に突入したかに思われたのである。

アメリカの指導力低下と中国の影響力低下

だが今回、サンクトペテルブルクのG20を見ていて、世界はG2時代というより、混濁の時代に向かっているような印象を受けた。それは主に、二つの理由による。

一つは、アメリカの指導力が低下していることである。10年前なら、ブッシュ政権が「イラクに大量破壊兵器が存在する!」と叫べば、黒いカラスも白くすることができたものだ。国連安保理で強引さを発揮し、最後は有志軍団を結成して「この指とまれ」とやれば、少なからぬ国が同調した。実際、アメリカはイラク戦争を起こし、地上軍を投入し、フセイン政権を転覆した。

だがいまや、オバマ政権は、シリアへの軍事介入について、アメリカ国内の議会すらまとめるのに四苦八苦している有り様だ。これまで一心同体で行動してきたイギリスは、議会の承認が得られないとして、さっさと降りてしまった。

これだけ世界各国から冷たい仕打ちを受けて、ようやくオバマ大統領は、同盟国日本の重要性を認識し、安倍首相に日米首脳会談を持ちかけてきたのだった。6月の英国サミットの際、同じホテルに宿泊しているにもかかわらず、オバマ大統領は安倍首相からの再三の要請を無視して、「わずか15分間の日米首脳会談」さえも拒否した。

実は、今回のG20サミットも同様だった。オバマ大統領は日本側の首脳会談要請を拒否し、安倍首相にワシントンから国際電話をかけて、お茶を濁したのだった。

それが、自国の議会承認が難航するや、とたんに手のひらを返して、G20での日米首脳会談をもちかけてきたのだ。それは、連邦議会に、G20で味方が多かった印象を見せつけるためであり、また実際に空爆を開始した際に、日本の資金援助が欲しいからに他ならない。

何と身勝手な大統領だろうか? 安倍首相は、ふざけるなと突き返すこともできたが、そこは日本にも、処々事情がある。オリンピックの開催地選挙の直前だとか、福島原発の放射能汚染で世界の顰蹙を買っているとかいったことだ。そこで安倍首相は大人の対応を取った。今回の日米首脳会談の時の安倍首相は、余裕のあるいい表情をしていた。

G20が機能不全に陥っているもう一つの理由は、新興国代表の中国の影響力低下である。これには、二つの要因が考えられる。

一つは、中国経済の失速である。習近平政権になってから、中国経済は明らかに失速している。まだ2008年のリーマンショックのような大事は起こっていないが、それは中国が社会主義で、リーマンブラザーズ級の大型金融企業が皆、国有企業だからである。国有企業は国が後ろから「無限の融資」を行えるので、倒産はないというわけだ。

だが中国国内は、地方債やシャドー・バンキングの問題を始め、いつ金融危機が勃発してもおかしくないような雰囲気になってきた。そのため、中国は自国の経済の再生に精一杯で、5年前のように、「4兆元出して世界を救おう」などと大風呂敷を掲げられなくなってしまったのである。

もう一つの要因は、G20デビューした習近平主席の「不恰好」だった。前任の胡錦濤主席は、派手なイベントや国際会議が大好きで、水を得た魚のように喜々としていた。

ところが、「八項規定」(贅沢禁止令)を出して華美なイベントや会議を取り締まっている習近平主席は、この手のイベントが大の苦手なのである。これがもし、同じ「太子党」(革命元老の子弟)で、現在監禁中の薄煕来・元重慶市党委書記だったら、どれほど見栄えがしたかと思う。

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