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理不尽は許さない 倍返しだ!わが社にも いる『半沢直樹』みたいな男

 理不尽な上司の言い分に、ぐっと拳を握りしめることもある。だが、彼らにだって悪意はないのかもしれない。組織や家族のため、人は時として判断を過つ。そのとき、部下はいかに生きるべきか。

泣きながら辞任をせまる

 5億円の不良債権の責任を押し付けようとした支店長の不正を逆に暴き、見事「倍返し!」に成功した半沢直樹。ドラマ『半沢直樹』は第2部も絶好調で、高視聴率をキープしている。

 ドラマもリアルだと評判だが、現実はよりドラマティックだ。今週は上司に立ち向かって理を通す"リアル半沢直樹"たちの勇姿を紹介しよう。

 第一勧業銀行(当時・現みずほ銀行)で「若手改革派」のひとりとして、経営陣に退任を迫った作家の江上剛氏が実体験を語る。

「第一勧銀が総会屋に40億円もの資金を供与していたんです。'97年、私が43歳のときのことでした。私はそれを知ったとき、目の前にある風船が、だんだん大きくなって破滅に向かって膨らんでいくのをじっと見ている思いでした。そこで決意したんです、この不祥事は表沙汰にしないといけないと。会長に直談判し、頭取に直訴しました」

 それまで江上氏は広報部次長として「隠蔽の天才」と呼ばれていたという。使い込みなどをして、普通なら懲戒解雇の行員を依願退職の形にして、退職金を使い込んだカネの返済に回させる。江上氏は行員たちの不祥事を揉み消すことに腐心してきた。

「しかし隠蔽してきた数々の不祥事は膿となって出てきた。それを総会屋が嗅ぎつけたんです。問題を抜本的解決に導くため、私たち若手行員は経営陣に辞任を迫った。第一勧銀の経営の根幹を揺るがす事件で、私たちは銀行組織を守る、その一念でした。だから辞任を迫るほうも、迫られるほうも涙を流しながら……。経営陣や私たちによる不祥事の隠蔽も、結局は組織を守るためではあったのです。

 もちろん、そんな理屈が通るわけはなく、第一勧銀は東京地検特捜部の強制捜査を受けました。歴代頭取を含めて11人が逮捕。しかし、捕まるときに顔を隠した人間は誰一人いません。堂々と潔く捕まっていった。自分は真っ当にやってきた、組織に忠実すぎたかもしれないけど、恥ずべきところはないと。その光景を見て涙が出そうでしたね」

 上司たちも、ただ悪に手を染めていたのではなかった。彼らなりの論理ではあるが、組織を思ってのことだったのである。

 ドラマでも支店長がたんなる悪役としては描かれていないし、半沢直樹も清廉潔白なヒーローではない。深みのある人物造形が魅力となっている。

 そんな半沢に与えられた次なるミッションは、老舗ホテルで焦げ付いた120億円の融資の回収だ。

 銀行という世界では今も昔も、不良債権を処理することで行内での評価が上がることに変わりはない。

 頭取に上り詰めた現三井住友銀行名誉顧問の西川善文氏は、半沢直樹的キャラクターの持ち主と言えるだろう。

 当時、十大商社の一角を占めながらも経営危機に陥った安宅産業を伊藤忠商事に引き取らせ、切れ者バンカーとして名を馳せた西川氏は、難題に直面する。'90年に旧住友銀行の融資先だった大阪の総合商社・伊藤萬(後にイトマンに改称)で起きた戦後最大の不正経理事件である。

「イトマン事件とは伊藤萬の河村良彦社長と伊藤寿永光常務の二人が投機目的と称して絵画や骨董、不動産などを法外な値段で購入。伊藤萬に莫大な損害を与えた事件で借入金は1兆2000億円にも及んでいる。

 なぜ、このようなトップの暴走が見過ごされてきたかといえば、社長の河村氏が住銀役員出身であり、『住友銀行の天皇』と呼ばれ絶大な権勢を誇っていた磯田一郎会長(故人)の後ろ盾により、社内でワンマン体制を敷いていたからなんですよ」(経済紙記者)

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