「講座: ビジネスに役立つ世界経済」
【第16回】 欧州経済は本当に底打ちしつつあるのか?

〔PHOTO〕gettyimages

このところのユーロ圏経済に関する経済指標は、ユーロの景気底打ちを示唆するものとして、マーケットで好感されているようだ。例えば、ユーロ圏の2013年4-6月期における実質GDP成長率は、前期比年率で+1.1%と2011年7-9月期以来のプラスとなった(ただし、前年同期比では-1.7%)。

この久しぶりのユーロ圏実質GDPのプラス成長に寄与したのが、ドイツとフランスであった。同時期のドイツの実質GDP成長率は、前期比年率+2.9%、フランスも同+1.9%と、ともに大幅な伸びとなった。両国とも個人消費の回復が共通項であったが、ドイツでは、それに加え、建設投資の回復が成長率を押し上げた。また、成長率の底上げにはそれほど大きな貢献はしないものの、数字的には輸出も回復基調にある。

この数字を受けて、ドイツの政策当局は、同国経済の底打ちが近いとコメントしている。だが、ここ数年、ドイツの政策当局は絶えず、当期が景気の底である、と言い続けており、「大本営発表」に近い。今回も、政策当局のコメントだからといって鵜呑みにしてはいけないと筆者は考える。

ユーロ圏経済はまだ金融危機から脱していない

今回、ドイツの経済成長率を押し上げた固定投資だが、その多くは建設投資である。この建設投資は、何もドイツで建設需要の拡大が始まったという訳ではなく、昨年終盤の厳冬によって延期されていた分が、気候がよくなったことで出てきたという「ペント・アップ・ディマンド」に過ぎない。

ドイツの昨年10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率で-1.8%の大幅減を記録している。建設投資の減少が大きく足を引っ張っていたので、この反動が4-6月期に出たに過ぎない。これを平準化すれば、ドイツ経済は依然として低迷が続いていると考えた方がよい。

4-6月期に輸出が回復したことも一時的な現象に過ぎない可能性がある。月次の貿易統計による輸出をみると、4月に前年比+8.3%の大幅増を記録し、これが4-6月期全体の輸出を底上げしたものの、5月は同-4.5%、6月は同-2.1%と再び減少に転じており、必ずしも輸出が底打ちした訳ではないと考える。

また、7月の消費者信頼感指数も-2.3と依然低迷しているし、新車登録台数も前年比-4.7%と減少が続いている。賃金の伸び率も鈍化しており、雇用や所得環境の改善も見られない。これらのことから、消費も決して底打ちしつつある訳ではない。

6月のドイツの月次経済指標でよい結果だったものは、製造業の新規受注(前年比+4.2%で前年比プラスだったのは2011年12月以来)、鉱工業生産指数(前年比+0.9%)だったが、これはいずれも、パリでの航空ショー開催に伴う「特需」であり、増加は一時的であることをドイツの政策当局も認めている(この要因もあって、フランスでも鉱工業生産指数が一時的に改善した)。

フランスも同様である。4、5月の鉱工業生産指数が前年比プラスに転じたが、6月は再びマイナスになっているし、新車登録台数の減少も続いている。輸出も4月に前年比+4.1%と回復したことが4-6月期のGDP統成長率における輸出の寄与度を押し上げたと考えられるが、5、6月は再び減少に転じており、輸出の回復感はない。

このように、ユーロ圏の中心国であるドイツ、フランスの経済が、現時点で底打ちしたとは言い難いのが現状である。

ユーロ圏のその他の国(周辺国といわれる)についても底打ちの兆候は見られない。以上から、ユーロ圏経済がついに金融危機から脱し、回復に向けて動きだしたとはとても言えない状況であるというのが実情だと思われる。

筆者は、欧州経済は、経済政策、特にFRB型の大胆な量的緩和を中心とした金融政策の導入がない限り、ユーロ圏経済は緩やかにデフレに向かって進んでいくと考えてきたが、その考えに変わりはない。

これは、90年代後半以降の日本経済がたどった道とほぼ同じである。日本も、「失われた20年」の間、ほぼ一方的にデフレが進展した訳ではなく、経済の下落(没落)トレンドの中でも多少の回復局面があった。だが、その局面で抜本的な経済政策が採られなかったため、デフレを克服することはできなかった。

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