経済の死角

3紙で18年間働いた日本人記者が明かす
米国の新聞はなぜ瀕死の状態に陥ったのか

文/岩部高明(元「ニューズ&オブザーバー」写真記者)

2013年09月03日(火)
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5年後に自分の仕事はあるのか

その夜、ダウンタウンのバー「アイザック・ハンター」は談笑する人々で溢れ返っていた。

米国ノース・カロライナ州の州都ローリー市の新聞社「ニューズ&オブザーバー」が主催した「フォト・ナイト」は、同紙の読者と写真記者の交流の場として設けられた。初めての試みだったにもかかわらず、たくさんの人が詰めかけ、私もスタッフ・カメラマンとして、訪れた人たちとの会話を楽しんでいた。今から2年前、2011年の夏のことだ。

このパーティーのホスト役を勤めたのは、同紙のトップ・エディターで編集責任者でもあるジョン・ドレッシャー氏。夜も更けて、人々が帰り始めた頃、私はバーの中ほどに立っていた彼に歩み寄り、催しが成功したことを祝福した。

同紙のみならず、新聞業界全体にとって暗い話が続いていたので、読者との結びつきを深めるこのようなイベントは、スタッフの士気を高める意味でもタイムリーだった。そして何より、大勢の人が詰めかけてくれたことが嬉しかった。

しばらくドレッシャー氏と世間話をした後、話題はやはり仕事のことに行き着いた。私は自分が懸念していたことを思い切って彼にぶつけた。

「ジョン、今から5年後に、僕の仕事はまだあると思う?」

私は、自分が解雇になる可能性について尋ねたのだ。オレのクビは大丈夫だろうか? と。

「タカアキ、お前は何てことを聞くんだ?」

いつも冷静なドレッシャー氏が、珍しく大きな動作でかぶりを振った。「そんなネガティブなことを言うもんじゃない」とか「余計な心配はやめて、目の前の仕事に集中しよう」などと言われるのかと一瞬考えたが、出てきた言葉はそのどちらとも違うものだった。

「私自身の仕事があるかどうかもわからないのに、そんなこと、わかるわけがないだろう」

バーの低い天井から届く柔らかい照明の下で、彼はごく真面目な表情をしていた。冗談を言ったというサインが微塵もないことを確かめながら、私は「やっぱりそうか・・・」と、内心ひどくうなだれていた。

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