泥沼化する汚染水問題に射す唯一の光明 「前に出る」方針を政府は加速せよ
いわき市久ノ浜。再開されない漁業 [Photo] Bloomberg via Getty Images

 福島第一原発の汚染水問題が泥沼化する中で、政府が前面に立って、海への汚染水の垂れ流し対策に乗り出す姿勢を鮮明にした。
 なぜ、決断にこれほど長い時間を必要としたのか、そもそも実態が解明できたのか、今打とうとしている手がベストチョイスなのかなど、突っ込みを入れる向きは少なくない。

 しかし、汚染水問題が阿武隈山系の地下水脈という大自然との未知の戦いになりつつある中で、あえて困難な決断を下した安倍政権のトライアルは、我々にとって唯一の光明である。

 その一方で、原発・電力危機の抜本的な解決に必要なのは、汚染水問題への取り組みだけではない。除染、廃炉、賠償といった直接的な福島第一原発の事故処理に加えて、東京電力という巨大な不良債権の処理や電力システムの改革、原発再稼働に伴う賠償制度の整備といった課題が山積しているからだ。
 民主党政権時代も通じて、初めて国が示した「前に出る」姿勢をぶれることなく、すべての関連分野で貫いて、日本の経済・社会のアキレス腱となっている原発・電力問題を解決して貰いたい。

安倍総理は外遊中のカタールで国が前面に出ることを強調

 先月29日早朝(現地時間28日夜)、外遊中の安倍晋三総理がカタールで記者会見し、改めて汚染水問題で国が前面に出る方針を強調した。
 記者団の質問に答える形で、「福島の事故は、東京電力任せにせず、汚染水対策を含めて、国として緊張感を持って、しっかりと対応していく必要がある」「私から、経済産業大臣及び原子力規制委員長に対し原因の究明と対応の対策を指示し、経済産業大臣が新たな対策に着手している」「政府を挙げて、全力で取り組んでいく所存である。政府が責任を持って対応し、国内外にしっかりと発信していく」などと力を込めたのだ。

 首相が汚染水問題に言及したのは、8月7日の原子力災害対策本部での挨拶に続いてのできごとだった。

 この間、政府では、菅義偉官房長官が26日午前の記者会見で汚染水問題に触れ、「実は、2週間前に、(茂木)経済産業大臣に対して、抜本対策を早急に進めるべく、予備費の活用も含めて財政措置もできる限りのことを行うよう指示した」と内幕を披露。
 これを受けて茂木経産相が同日、原発周辺への地下水の流入を防ぐ「凍土遮水壁」の調査研究と建設に国費(予備費、2013年度は一般会計に3500億円、復興特別会計に6000億円がそれぞれ計上されている)を投入する方針を表明した。

 これまでに明らかになっている政府・東電の対策をまとめると、これらが柱だ。

1. 凍土遮水壁で原発付近への地下水の流入を遮断
2. 原発内の汚染水を新型浄化装置で浄化
3. 原発の海側に水ガラスと呼ばれる薬剤を投入して汚染水が海に流れ込むのを防ぐ遮水壁を構築
4. 汚染されていないか、汚染されていても低濃度の地下水は海に放出する

 これらの措置を組み合わせることで、廃炉作業の大きな障害となっている汚染水問題を解消したいとしている。

 こうした対策について、専門家の間から、様々な疑問が提起されているのは事実だ。
 もっとも根本的なのは、そもそも流れ込む地下水の全容と汚染の原因を特定できたのかという疑問だろう。阿武隈山系から日量1000トンの地下水が1~4号機の原子炉建屋付近に流れ込み、このうちの400トンが建屋のひび割れから建物の内部に侵入しているという。

 これらは汲み上げて、貯蔵タンクに移している模様だが、残りの600トンのうち300トン(ドラム缶1500本分)がトレンチ(地下坑道)の高濃度汚染水と混じって海に流れ込んでいるのではないか、と経済産業省は見ている。
 しかし、これらの見方は所詮、推計でしかない。

 また、切り札の凍土遮水壁は、1~4号の原子炉建屋を囲い込むように、1400mにわたって地盤を掘削。管を地中に一定の間隔で並べて埋め、その中にマイナス40度の冷却材を流し込むことによって、周辺の土を凍らせて地中に凍土の壁を構築し、建屋への地下水の流入を防ごうという試みだ。

 安倍政権が今年4月「廃炉対策推進会議(議長・茂木経産相)」の下部組織として設置した「汚染水処理対策委員会」に、ゼネコントップの鹿島建設が提案。粘土や砕石などを使った他社の遮水壁構築案よりも、「遮水能力が高く、施工期間も短い」として採用されることになった経緯がある。

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