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薄煕来は"完全に終わった政治家"なのか? ~5日間の公開裁判で暴露された中国社会の実態

2013年09月02日(月) 近藤 大介
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〔PHOTO〕gettyimages

こんなに面白い中国の法廷劇を見たのは初めてだった。

8月22日から26日まで、5日連続で行われた薄煕来被告の公判である。新華社通信は、5日間のすべてのやりとりを書面で公開したが、それは小さな文字が羅列された用紙101枚に及んだ。全文を読み直してみると、いまの中国社会の問題が、すべて凝縮しているように思える。

以下、5日間のやりとりの"名場面"を再現し、解説しよう。

 

8月22日(初日)

会場となった山東省済南市中級人民法院と検察側は、本来はこの日一日で公判を終わらせるつもりだったようで、盛りだくさんの内容となった。

まずは検察側が、起訴状を読み上げた。それは1999年から2012年まで、大連の関係者たちから2,179万587元の賄賂を受け取ったというものだった。

なぜこれほど額が少なく、かつ大連時代に限定しているのだろう? 商務部長(2003年~2007年)、重慶市党委書記(2007年~2012年)時代の方が、賄賂は大規模だった可能性もあるのに、そこには一切踏み込んでいない。

薄煕来を商務部長に抜擢したのも、重慶市党委書記に抜擢したのも、実際には江沢民元総書記である。江沢民は、自分が総書記になった初期の頃に薄煕来の父・薄一波元副首相に大変世話になったため、恩返しをしたのである。だから、「大連後」に踏み込めば、江沢民に行き当たることになる。また、重慶時代の疑惑に踏み込めば、周永康前常務委員も連座される可能性がある。

中国語で「刑不上大夫」(刑は大臣には及ばない)という言葉があるが、共産党の常務委員(トップ7)まで行った者は裁かないというのが、鄧小平以降の不文律になっている。これは毛沢東が主導した文化大革命の反省である。厳密に法律を適用していけば、「全民腐敗」と呼ばれる中国社会にあっては、トップ7も含めて、政治家がいなくなってしまうのである。選挙のない一党独裁は、必然的に腐敗するのだ。

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