ドイツ
アメリカが主張する「動かぬ証拠」は当てにできるのか? ~シリアへの軍事介入をめぐる各国の動き
〔PHOTO〕gettyimages

ロシアの外務大臣セルゲイ・ラブロフは、アメリカのジョン・ケリー国務長官に電話して訊いたそうだ。「何が目的でシリアを攻撃しようとしているのか」と。

攻撃が一時的に成功しようが、あるいは失敗しようが、どちらにしても、シリアに平和が訪れるとは思えない。事態はさらに複雑に、悪化するだけだろう。今のイラクやリビアのように。

シリアの毒ガス攻撃に「動かぬ証拠」はあるか?

8月21日、シリアの首都ダマスカス近郊で、毒ガス攻撃が行われた。死者は120人(反政府派の発表では1300人)と言われている。しかし、誰がやったのかが分からない。ところが26日には、アメリカは、これはシリア政府がやったと断言した。「動かぬ証拠」を見つけたのだそうだ。

「化学兵器で罪のない市民を殺すことは、道徳上、一番ひどく、許しがたい事」(ケリー国務長官)

イギリスのキャメロン首相も、「シリアの毒ガス攻撃が、シリア政府の手で行われたことに、ほとんど疑いを持っていない」そうだ。「化学兵器の使用は不正であり、世界はそれを何もせずに見ているわけにはいかない」と、攻撃に意欲的。

また、フランスのオランド大統領も同様で、「フランスは、シリアで化学兵器を使用した者を罰する用意がある」と、偉そうに言っている。オランド大統領はすでにアフリカのマリに出兵しているし、社会党にしてはきな臭いことが好きなようだ。

しかし、アメリカのいう「動かぬ証拠」は当てになるのだろうか。

湾岸戦争のとき、イギリスのブレア首相は、「イラクは化学兵器と生物兵器を保有している」と言った。アメリカのパウエル国務長官は、「サダム・フセインは、ガス壊疽、ペスト、チフス、コレラ、天然痘など、病原菌の研究に着手した」ので、アメリカは、その「動かぬ証拠」で、「正当な予防的攻撃として」イラク攻撃を開始したが、あるはずだった大量破壊兵器は、未だに見つかっていない。後になってCIAが、そんなものは最初からなかったと言っている。

アメリカ軍が立ち去ったあとのイラクは、混沌の底に沈殿した。シーア派とスンニ派の対立が激化し、しょっちゅうあちこちで爆弾がさく裂し、無差別に市民が殺戮されている。今月だけ見ても、何度、自爆テロがあったことか。

でも、アメリカは、そんなことと自分たちは一切関係がないような顔をしている。そして、「起こったことを論理的に見るなら、アサドの軍隊がこの毒ガス攻撃の背後にいるのは疑いのないことだ」(ホワイトハウスの報道官)として、すでに地中海東部に艦隊を並べている。

28日中に短期の攻撃が開始されるという未確認の情報さえ飛び交った(実際は、攻撃は開始されなかった)。いずれにしても、アメリカ軍は準備万端で、あとはオバマ大統領のゴーサインを待つだけだという。

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