【事実関係】
8月19日、モスクワで日露外務次官級協議が行われた。
【コメント】
2.
日露双方が、北方領土問題に関する協議の内容が外部に出ないように細心の注意を払っている。「今回は、お互いの原則的立場を確認したのみで、北方領土交渉の前身はなかった」(在モスクワ日本人記者)ということであるが、現時点における「お互いの原則的立場を確認する」ということは、交渉のスタート点に日露外務省が立ったということだ。このスタート点に立つことができただけでも、今回の次官級協議で日本側は所期の目的を達成することができた。
3.―(1)
北方領土問題の解決は、首脳間の決断によってしかできない。具体的には、プーチン大統領は北方領土の一部もしくは全部を日本に引き渡すという決断をしなくてはならない。安倍晋三首相は、ロシア案が、「北方四島に対する日本の主権をロシアが認める」という日本政府の基本的立場を全面的に認める回答でない場合(その可能性はかなり高い)、譲歩するか、交渉を決裂させるかについて政治決断を行わなくてはならない。妥協の内容によっては、日本の世論、特に保守系、右翼系から激しい反発を受ける可能性がある。
3.―(2)
今回の日露外務次官級協議は、このような政治決断を求めない専門家間の協議だ。要するに両国外務省の官僚レベルで解決できる問題、外相レベルで解決できる問題と首相間の決断が必要になる問題を仕分けすることが次官級協議の目的だ。この目的の達成に向けて、良いスタートを切ったと思う。「杉山外務審議官は今回の協議のために北方領土問題の過去の経緯について猛勉強した」(政治部記者)ということであるが、その成果が十分出た。杉山外審や上月豊久外務省欧州局長の功績は大きい。
4.―(1)
今次協議における最大の成果は、9月5日前後にサンクトペテルブルグでの日露首脳会談に合意したことだ。・・・・・・
【事実関係】
東洋学園大学の朱建栄教授が、7月17日に中国・上海に渡った後、消息がつかめいない。
【コメント】
1.
東洋学園大学の朱建栄教授が、7月17日、中国の上海に渡った後、消息がつかめていない。
(略)
2.―(2)
朱教授の政治的立場は、中国政府に近い。評論家の中では朱教授を「中国政府の代弁者だ」と批判する人もいる。朱教授は、中華人民共和国の愛国者である。それだから、いかなる状況においても自国政府の立場をできるだけ日本人に理解させることに発言の力点を置いていた。もっとも国家安全部からすると、中国政府を熱心に擁護する朱教授の言説が、日本のスパイであることを隠蔽するための偽装に見えるのであろう。
3.―(1)
朱教授が対日政策をめぐる中国政府の内部抗争に巻き込まれてしまったのではないかと懸念される。中国筋は、段階的に朱教授が拘束された可能性、日本のスパイ容疑がかけられているなどという情報をリークしている。日本の政府とマスメディアがどのような反応をするのか探っているのであろう。そして、国家安全部は、大きな事件に仕立てるか、それとも、事件化せずに静かに処理するかについて、慎重に検討しているのだと思う。
3.―(2)
朱教授は、中国外交部(外務省)とは良好な関係を持っている。朱教授が日本のスパイという話を作れば、対日政策において国家安全部が外交部を牽制することができる。・・・・・・