佐藤優のインテリジェンス・レポート「日露外務次官級協議」「朱建栄事件」
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【はじめに】

「東京新聞」(8月23日朝刊)、「サンケイエクスプレス」(8月24日)、「琉球新報」(8月24日)の連載コラムにも書きましたが、東洋学園大学の朱建栄 先生の身辺で尋常でないことが起きています。

私は、鈴木宗男事件に連座して2002年5月14日に東京地検特捜部に逮捕される まで『世界』(岩波書店)で、世界論壇月報という連載を朱教授たちと担当していいました。鈴木宗男事件に連座して筆者が東京地検特捜部に逮捕されたと き、朱先生は私の状況をひどく心配し、獄中にメッセージと『史記列伝』を差し入れてくれました。苦しい状況に陥ったとき、どのように身を律したらよい かについて中国の先人から学べばよいとの朱先生の配慮だったと思います。

また、筆者が保釈された後、朱教授は、「佐藤さんのように日本の国を深く愛している人がこのようなことになった僕はほんとうに悲しいです」と声をかけ てくれました。当時は誰もが筆者と会うことを忌避していた時期でした。朱教授の温かい言葉がとてもうれしかったです。 中国国家安全部がつまらない諜報ゲームをやめ、一刻も早く朱先生を日本の家族のもとに帰すことが日中関係のためにも、中国の国益にもかなうと私は確信しています。

【佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol.019 目次】
 ■分析メモ No.44「日露外務次官級協議」
 ■分析メモ No.45 「朱建栄事件」
―第2部― 読書ノート
 ■読書ノート No.56『宇野理論とアメリカ資本主義』
 ■読書ノート No.57『住宅貧乏都市モスクワ』
 ■読書ノート No.58「トイレの懺悔室」(『憤死』収録)
―第3部― 質疑応答
―第4部― 文化放送「くにまるジャパン」発言録
―第5部― 今後のラジオ出演、講演会などの日程

分析メモ No.44「日露外務次官級協議」

【事実関係】
8月19日、モスクワで日露外務次官級協議が行われた。

【コメント】
2.
日露双方が、北方領土問題に関する協議の内容が外部に出ないように細心の注意を払っている。「今回は、お互いの原則的立場を確認したのみで、北方領土交渉の前身はなかった」(在モスクワ日本人記者)ということであるが、現時点における「お互いの原則的立場を確認する」ということは、交渉のスタート点に日露外務省が立ったということだ。このスタート点に立つことができただけでも、今回の次官級協議で日本側は所期の目的を達成することができた。

3.―(1)
北方領土問題の解決は、首脳間の決断によってしかできない。具体的には、プーチン大統領は北方領土の一部もしくは全部を日本に引き渡すという決断をしなくてはならない。安倍晋三首相は、ロシア案が、「北方四島に対する日本の主権をロシアが認める」という日本政府の基本的立場を全面的に認める回答でない場合(その可能性はかなり高い)、譲歩するか、交渉を決裂させるかについて政治決断を行わなくてはならない。妥協の内容によっては、日本の世論、特に保守系、右翼系から激しい反発を受ける可能性がある。

3.―(2)
今回の日露外務次官級協議は、このような政治決断を求めない専門家間の協議だ。要するに両国外務省の官僚レベルで解決できる問題、外相レベルで解決できる問題と首相間の決断が必要になる問題を仕分けすることが次官級協議の目的だ。この目的の達成に向けて、良いスタートを切ったと思う。「杉山外務審議官は今回の協議のために北方領土問題の過去の経緯について猛勉強した」(政治部記者)ということであるが、その成果が十分出た。杉山外審や上月豊久外務省欧州局長の功績は大きい。

4.―(1)
今次協議における最大の成果は、9月5日前後にサンクトペテルブルグでの日露首脳会談に合意したことだ。・・・・・・

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