[BCリーグ]
石川・深澤季生コーチ「若手を育てるベテラン木田の存在」

 前期に地区優勝した石川ミリオンスターズは、後期はチームの勝利に加えて若手育成にも力を入れています。なかでも成長著しいのが、ピッチャーの上條優太(八千代東高)です。1年目の昨季は8試合に登板し、0勝1敗、防御率9.00。投げれば、四球を出すというピッチングで、正直いつクビになるかといったような状態でした。ところが、今季は29試合に投げて2勝2敗1セーブ、防御率は1.88です。8月10日の信濃グランセローズ戦では6回2/3を投げて1安打10奪三振で無失点。7回2死まではノーヒットノーランという快投で2勝目を挙げました。

 上條はゆったりとした腕の振りから、伸びのある球を投げます。森慎二監督の言葉を借りれば、イメージ的には杉内俊哉投手(巨人)のような感じです。ムダな力みがなく、リリースポイントで最大の力を出しているのです。やわらかいフォームに似つかないボールが来るため、信濃のNPB経験者の選手も空振り三振するほどでした。

 成長の最大の要因は、気持ちの変化にあります。昨季はマウンド上で落ちつきがなく、不安がにじみ出ていました。しかし今季は堂々としていて、その姿からは自信が窺い知ることができます。「NPBに行きたい」とはっきりと口にするようになり、練習でも一人黙々と走る姿をよく目にするようになりました。

 こうした意識の変化の背景には、今季加入した木田優夫さんの存在があります。木田さんはよく、若いピッチャーに「自分がなぜ、このリーグにいるのかを考えてほしい。何かが足りないからだろう? じゃあ、どうしたらNPBに行けるのかを考えて、もっと練習しなくちゃダメだ。調整している暇はない。毎日が勝負だよ」とアドバイスしてくれます。NPBのみならず、メジャーリーグの経験もある木田さんの言葉は説得力に満ちています。こうしたアドバイスが、上條たちの背中を押し、意識を引き上げてくれているのです。

 その木田さんに実力を認められているのが、キャッチャーの笹沢学(帝京高-早稲田大-西濃運輸)です。強肩でフットワークのいい笹沢は、木田さんから見ても「NPBの二軍でも十分に通用する」ほどの実力の持ち主です。課題はリード面。複数の球種を持っているピッチャーであっても、ひとつの球種、特に真っ直ぐに偏り過ぎるところがあるのです。そうすると、相手は狙いを絞りやすくなる。そのため、打たれ始めると止まらなくなってしまうのです。確かにもっとレベルの高いピッチャーであれば、真っ直ぐ中心の配球でも抑えられると思うのですが、石川の若手はそこまでのレベルには達していません。その彼らに見合った配球をしなければならないのです。

 そのためにもキャッチャーとして重要なのは、ピッチャーとのコミュニケーションです。僕はピッチャーの経験もありますが、ピッチャーはキャッチャーの考えを知りたいと思っています。どういう意図をもっての配球なのか、それを理解したうえで投げるのとそうでないのとでは気持ちが違います。そして、何よりも信頼関係を築くためにもコミュニケーションは大事です。試合以外の何気ない会話でもいい。キャッチャーは至るところでピッチャーに話かけることが必要です。もちろん、笹沢もそのことを理解していますし、コミュニケーションを図ってはいます。しかし、僕からすると、まだまだ十分ではありません。もっと積極的に話をしてほしいなと思っています。